第533話 野良狼
色々と話も進んで、仕事も増えたけどそれはそれ。
何とでもなるしどうとでもできるので、ヌロスレアに来たついでにちょっと近くの森を散歩することにした。
近くといっても、王都から少し離れてる場所なので冒険者達がせっせと獰猛な野生動物や低位の魔物狩りに勤しむのをちょくちょく見かける。
この辺はそれ程強い魔物は出ないけど、それなりに素材が良い値段で売れるのが居るので良い狩場なのだろう。
無茶と無謀は別だし、効率の良い狩場があれば積極的に使うべきというのは凄くよく分かる。
内心、彼らにエールを送りつつも邪魔しないように森を歩きながらちょくちょく森の恵みをつまみ食いしながらのんびりと散歩を楽しむ。
たまにはこんな風にゆったり散歩するのも良いよね。
虎太郎とかと出かけると大抵狩りになるし。
あれはあれで楽しいけど、目的もなくぶらぶら歩けるのは今世の特権だろう。
気の向くままに適当に進み、木の上でカリカリとどんぐりを齧るリスや小動物を眺めて和み、縄張り争いをしている大型の野生動物達を軽く観戦して適当なアフレコ入れたり、それっぽい解説を入れて楽しむ。
実に無駄が多い素晴らしい時間だ。
ただ、今度来る時は誰か連れてきてもいいかも。
一人の時間はそれはそれで楽しいけど、解説とか実況とかは隣で聞いてくれる人が居た方がより楽しめそうだ。
そんな事を考えながら進んでいた時だった。
不意にか細い鳴き声が遠くから微かに聞こえてくる。
何となくその声を探すように近づいていくと、木々の陰に隠れる形で、一匹の狼と生まれて間もないと思われる小さな狼を発見。
真っ黒な親と思われる狼は全身に怪我をしており、痛々しい姿だが、生まれて間もないと思われる小さな狼は多少の疲労はあるようだが無事な様子。
俺を見て、グルルと一瞬威嚇してきた狼だったが、敵意がないと分かったのかすぐに収めた。
賢い子だ。
ただ、この子達は普通の狼ではない。
分類として魔物に属する。
魔物と一口に言っても、全てが全て人間に害をなすという訳でもない。
とはいえ、大抵の魔物は害をなしてしまうのだが、目の前の狼達はレアもレアな温厚な性格の魔物。
逆に人間に狙われてしまうような魔物なんだが、それにしても珍しい。
「おいで。手当しよう。その子も安全な場所の方がいいだろ?」
そう尋ねると、その子は言葉を理解できたようで子狼を連れて着いてくる。
流石にこのまま真っ直ぐ屋敷に連れて帰るのはこの子達も大変だろうし……うん、確か緊急用の小屋で使ってないところがあったな。
そこで落ち着いてからかな。
手当もしないとだし。
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