第531話 ナチュラルな答え

元々、スイレン達はヌロスレアに希望をもたらす為の起爆剤としてヌロスレアを拠点に歌手活動を始めてもらった。


その人気も不動になりつつあり、拠点をヌロスレアより大きなスレインドに変えるのは悪くないと思う。


ヌロスレア国外からの評価も悪くない。


レグルス兄様も大賛成してくれるだろうが……考えることがあるとすれば、ヌロスレアのファン達の反応だろうか。


スイレンは文字通りの大人気な歌姫だし、対応を間違えれば暴動がおきかねない。


まあ、そちらはどうにでもなる。


本人が希望する以上、俺はそちらを尊重したいし、どうにかしてみせよう。


それくらい、スイレン達は俺の頼みを頑張って叶えてくれてるからね。


ただ、気になるのは2つ目の頼みの方。


俺の歌姫を名乗りたいって……プロポーズみたいな言葉だけど、本気のようだししっかりと答えないと礼儀に反するか。


「スレインドに活動拠点を移す件は了解したよ。アネP」

「ええ、忙しくなりそうね」


実に楽しそうな笑みを浮かべるアネP。


乙女でマッチョな店主様は相変わらず頼りになるものだ。


「2つ目の頼みについては……スイレン次第かな」

「私次第……ですか?」

「うん。俺の歌姫ってポジションはそれなりにハードだよ?」


まあ、別に俺自身はそこまで高いハードルではないし、ハードでもないだろうが……俺の歌姫という立場を名乗るならそれなりに大変だろう。


メリットもあれば、デメリットも多くなる。


だからこそ、スイレンが目指すのなら色々大変だろうが……そんな俺の言葉にスイレンはパァっと顔を輝かせ頷いた。


「覚悟の上です。必ずなってみせます!」

「じゃあ、期待しておくよ」


世界一の歌姫となったスイレンを俺の歌姫にかぁ……むしろ俺の方が色々大変そうだが、それでスイレンがもっと高みを目指せるのなら躊躇う理由もない。


きっかけを与えたのは俺だし、些細なことだろうと俺の存在でスイレンがもっと先に行けると言うのなら、頑張ってる人の背を押すくらいのことはしてもバチは当たらないだろう。


「あ、それと、今度うちの学園で新しい催しがあってね。ゲストで歌ってくれると嬉しいんだけど」

「分かりました」

「あら、それって例の?」


サラッと学園祭の参加を打診すると、何の疑問もなくYESと答えるスイレンと、話には聞いてたのか興味津々なアネP。


流石に耳が早いなぁと思いながら、学園祭について軽く説明をするが、俄然楽しそうな表情のアネPと、心から望んでいた答えを得られたと言わんばかりの満足気なスイレンの様子が何とも賑やかであった。


特別ゲストも確保出来たし、スイレンがまた1歩進める可能性も見れた。


悪くない結果かな?


しかし、恩返しと言われるようなことはしてない気もするが……スイレンも真面目だよね。


そういう所も割と気に入ってるんだけどね。

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