第530話 歌姫スイレンの相談

「シリウスちゃん、待ってたわよぉ!」

「お久しぶりです。シリウス様」


ケイオスと話してから、アネPの店に行くと相変わらず乙女でマッチョな店主のアネPとアネPがプロデュースしている(俺と共同で)『ディーヴァ・プロジェクト』のメインと言える俺が選んだ歌姫こと、スイレンが出迎えてくれる。


「歌手活動は順調そうだね」

「シリウス様のご指導のお陰です。まさか私があんなに大勢の方に応援して頂けるなんて思いもしませんでした」


最初の頃……それこそ、ヌロスレア革命前は俺が代役を勤めていたが、今では元となったスイレン本人がきっちりと歌手として頑張ってくれている。


人気も凄まじく、その実力も日々向上しているが、スイレン本人はこの通り控えめな正確なのでそんな謙虚な返事をされる。


「ふふ、スイレンちゃんは大人気よねぇ。流石私たちの選んだ歌姫だわぁ」

「だね」


元々、スイレンには才能があった。


だからこそ、スイレンを発見したからこそディーヴァ・プロジェクトが形なったと言ってもいいくらいだ。


「ありがとうございます。でも、まだまだです。シリウス様が示してくださった理想の私……それを目指してもっともっと上手くなってみせます」

「うん、期待してるよ」


この向上心は本当に見習いたいところだ。


プロって感じでカッコイイし。


「それで、相談があるって話だったね」


軽い世間話をしてから、早速本日の本題に入る。


今日、ヌロスレアに来たのはケイオスと話に来ただけでなく、アネP経由でスイレンから相談があると連絡が来たからだ。


「お忙しい中、来てくださってありがとうございます」

「気にしなくていいよ。それで何か困り事かな?」


わざわざ俺に直接相談というのだから、歌手活動の相談とかだろうかと考えていると、出てきたのはそれに近い話とちょっと方向性が違う話であった。


「その……二つほどお願いがあります。1つは私の活動拠点をシリウス様の居るスレインド王国に移す事へのご許可を。もう1つは……これは先の話ですが、私がもっともっと成長して世界一の歌手になったらシリウス様の歌姫であると名乗らせて欲しいのです」


……俺の歌姫?


「専属になりたいってことかな?」

「……ここの所、ずっと考えていたのです。私は歌うのが好きです。でも、それ以上に誰かのために歌った方がもっといい歌になるんじゃないかって。そう考えた時に、応援してくださる皆さんには申し訳ないんですが……私は、私を救ってくれた貴方の為に歌いたいと分不相応にもそう考えてしまったのです」


真っ直ぐに俺の瞳を見ながらスイレンはそう言葉を口にする。


頬が少し赤くなってるような気がするが……まあ、話はなんとなく分かった。

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