第526話 父親的には

「そういえば、シリウスが来たのって僕に用事?それともスワロの手紙?」


ラウル兄様が上機嫌で部屋を後にすると、そう要件を尋ねてくるレグルス兄様。


「両方ですね」

「そっかぁ。文通楽しんでるんだね」

「父親としては複雑ですか?」

「まあね。でもあの本の虫のスワロが外に目を向けたってだけでちょっとほろりとくるものがあるよ」


「そのうち本と結婚するとか言いそうだったし」と苦笑するレグルス兄様。


まあ、確かにそれくらいスワロは本が大好きだからなぁ。


「婿入りでも嫁入りでもいいけど、なるべく顔が見やすいのなら親としては安心かな」

「そうなるのはまだまだ先でしょうけどね」

「確かにね。ティーがシリウスに嫁ぐ方が早そうだ。孫の顔を先に見せるのはティーになるかな」


……その話を俺に振られてもなぁ。


「そういえば、ティーが今朝会った時に『おじちゃまが新しいお菓子作るかも!』って嬉しそうだったけど本当?」


……おかしい。生徒会長との話を知る前から予知してるとは。


フィリアといい、加護の力だろうか?


いや、フィリアは加護を渡す前からそうなりつつあったし関係ないか。


加護の繋がりで知るにしても、考える前のことを予知はちょっと違う気がする。


出来なくはないだろうけど、使った様子はないしそれに類する力はまだ誰からも感じない。


勘かな。


「色々と試作はしてみます」

「甘いものなら娘たちは喜びそうだ。まあ、妹達や麗しの母君はなお喜ぶだろうけど」

「でしょうね」


いつも穏やかで優しくて温かい我が姉様たちと母様だが、甘いものに目がないのもよく知ってる。


レシア姉様はプリンが好きだったなぁ。


前に学園に持っていった時はそれはもう喜んでくれたものだ。


ローザ姉様はシュークリームがお気に召してるようだった。


とはいえ、色々作って食べてくれるからどれも好きなのだろう。


母様は……色々真っ先に献上してるけど、モンブランが一番反応は良かったかも。


とはいえ、母様はそういうの隠すの上手いからなぁ。


息子でも読み切るのが難しいレベルだ。


本心は言ってくれるけど、時々ミステリアスになろうとするのはどこか既視感がある。なんだろう?


「まあ、僕も楽しみだけど無理はしないようにね」

「大丈夫です。むしろ楽をさせて貰ってますから」

「だといいけど。シリウスは気がつくとすぐに色々抱えちゃうから念の為ね」


まあ、確かに魔道具や学園祭に必要な道具類の一部は俺がこれから作るので多少仕事はあるが、それでもかなり楽な方だと思う。


寝る時間どころか、止まる時間、瞬きをどころか息すら惜しむようになったらマジで終わりだからなぁ。


優しい兄様の言葉に気をつけますと返事して、要件を終わらせてから最近のレグルス兄様の話を少し聞く。


むしろレグルス兄様の方がヤバそうな気がするのは俺だけだろうか?


出来ることは何でもお手伝いさせて頂きます。

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