第525話 変装とは
「これならどうだ!」
「いや、何も変わってないよ。むしろ悪化してる」
レグルス兄様に会いに執務室に入ると、そこでは謎の格好をしたラウル兄様に呆れたような表情のレグルス兄様が。
「楽しそうですね」
「やあ、シリウス。お帰り」
「おう、シリウス!なあ、これどう思う?」
そう言って黒マントと黒い帽子と前にあげたサングラスをかけるラウル兄様。
どこかの探偵とか活躍してそうな世界線の色的な組織のボスに見えます。
それくらい迫力はあった。
あと、隠しきれないカリスマを感じる。
「似合ってますが、目立ちますね」
「目立つか。ならダメだな」
「ところで何をしてるんですか?」
「ラウル兄さんがね。シリウスが企画した学園祭にお忍びで行きたいんだって。それで変装したから許可しろって言われてたところ」
苦労が滲み出る我が兄に深く感謝の意を示すために頭を下げる。
にしても、お忍びでか。
「来賓として招かれるのでは?俺も店とかやる事になるので招待しようと思ってましたし」
「へぇ、シリウスがお店を出すのか。それは楽しみだ」
「生徒会長の頼みでやる事になりそうです。あと、魔法の実演もやるかもしれません」
「それは是非とも見に行かないとね」
実に楽しそうに微笑むレグルス兄様。
親に参観日を知らせた時の子供の気持ちだ。
そんな経験欠片もないのでかなり適当だけど。
「そんな訳で、諦めて正式に行こうね」
「堅苦しく楽しむもんじゃなさそうだし、嫌だ」
新しいイベント、しかも身内が出てるそれに好き勝手一人で気ままに楽しみたいが立場が許さないラウル兄様。
レグルス兄様もそういうの大好きだけど、止める立場なのは流石は良心。
まあ、ラウル兄様も無理だと分かってても言いたい時があるのだろう。
だからこそ、弟として出来ることを。
「ある程度なら好きにできる時間を俺が作りますのでそれでどうでしょう?」
「おう、なら頼んだぞ!」
「いつも悪いね、シリウス」
「いえ。その代わり自由にさせて貰ってますから」
兄二人が父様の跡を継いでくれるからこそ、第3王子の俺は好きにやらせて貰っているのだ。
たまのお忍びの手配くらいは訳ない。
何だかんだで、家族のお忍びは俺が手配するのが一番確実だしね。
「そういや、魔法の実演するなら騎士科の連中も模擬戦とかするのか?」
「やるみたいですね。あとは剣舞とかもやるかもしれません」
その辺は騎士科の頑張り次第だけど。
「なら、稽古つけるのも悪くなさそうだな。どれだけ有望なのが眠ってるか楽しみだ!」
……哀れ、騎士科。
「シリウスも一緒にやろうぜ!」
巻き込まれた。哀れとか言ってる場合ちゃいそう。
「時間があったらやりましょう」
「おう!楽しみにしとくぜ!治癒もな!」
まあ、流石にラウル兄様も手加減はするだろう。
しないと形も残らないし。
ただ、翌日立てなくなるくらいにはみっちり打ちのめされるだろうし、治療班として頑張ることにもなるかも。
……うん、頑張れ騎士科諸君。
真面目な彼らを思って俺は心の中で合唱しておく。
特別稽古ってことで。
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