第520話 生徒会室へ

翌日の放課後。


授業が終わり、フィリア達と帰りにどこか寄っていこうかと話していると、生徒会からの使いの生徒が俺を尋ねてきた。


「学園祭などに関して、ご意見を伺えないかと」


非常に畏まった言い方で、お時間を割いて恐縮ですがと頼み込んでくるその生徒。


断られたらかなり困るというオーラが出まくってる様子からは彼女の所属する生徒会の人間……もっといえば、上の生徒会長辺りにでも弱味でも握られてるのだろうかと邪推してしまいそうになるような必死さを感じなくないが、気のせいだと思いたい。


うん、邪推良くない。


まあ、俺としても発案だけしといて任せっぱなしというのもあれだし、可能な限りは協力するべきだろうという結論に達するので、OKの返事をすると心から安堵した顔をされるが、気のせいだろう。


「フィリア」

「はい、先に行ってますね」


話の早い婚約者に断りを入れるが、入れるまでもなく分かってるという返事をされる。


心が通じ合ってるのがとても心地よい。


心どころか加護でも繋がってるけど、それはそれ。


「……先に色々頼んでおくから、任せて」


こういう時、同じく話の早いセシルはそう言っていつも通り茶目っ気を出しつつ、フィリアのことも言外に請けおってくれる。


「うん、頼りにしてるよ。勿論、シャルティアもね」

「分かりました」


頼れる俺の騎士様もいるし、フィリアの方は大丈夫だろうと三人を見送ってから、生徒会室に向かう。


なんだかんだと、学園に入学してそこそこ経ってるけど、生徒会室に行ったことはなかった気がする。


用事もなかったし、当然といえば当然か。


「そういえば、生徒会室は男子厳禁とかはなかったっけ?」


歩きながらそういえばと思い出すのは、生徒会の今の役員が全員女子で固まっていたような気がするという情報。


意図してなのかは分からないが女の園になってるようだし、大丈夫かと確認すると案内してくれてる使いの生徒は問題ないと頷く。


「今が異例なだけで本来は男女関係なく入れる場所ですので。それに殿下が噂のような無類の好色家でないのはこの学園の生徒なら分かってますので、問題ありません」


前半はともかく、後半の危惧はしてなかったかな。


まあ、信じてもらってるのなら良しとしよう。


「そっか。ちなみに今の生徒会の人間って……」

「えっと、全員会長の推薦です」

「なるほど」


意図的に女子生徒で固めたのだとしたら、そういう趣味かはたまた別の意図もあるのか。


深読みはよくないが、優秀さで選んでるとしたら相当見る目があるのかも。


何にせよ、パーティーとかで軽くしか話したことがないあの紅髪のご令嬢の人となりはよく分からないし、知る機会にはなるかもね。

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