第519話 学園祭計画

その日、学園に行くと学園長からお呼びがかかった。


正確には、職員室に顔を出した俺を見たドレッド先生から話があると学園長室まで連れてこられたのだが、呼び出しの主は学園長だったので何も間違ってないと思う。


まあ、なんの説明もなく学園長室まで連れてきたドレッド先生はもう少し説明をしても良かったと思うけど、ドレッド先生だし仕方ないとも思う。


こういうの楽しむ人だしな。


「お忙しい中すみませんな、殿下」

「いえ。何か用でも?」

「ドレッドから説明は受けてないですか?」

「全く」


そう答えるとやれやれとドレッド先生に呆れたような視線を向けてから、学園長はごほんと咳払いをしてから言った。


「要件は、以前殿下にご提案頂いた学園祭についてです」


学園祭?


そういえば、前世で良さげだった学校行事を再現しようといくつか提案してたな。


他には球技大会とか、職場体験、あとは修学旅行なんかも話してたっけ。


「陛下とも十分に話しまして、今年中に開催出来る見通しがたちましたのでそのご報告をと思いまして」

「そうでしたか。それは良かったです」


正直、学園にとっても国にとっても新しい試みなので俺の在学中に開催出来れば良いなぁ程度の心持ちだったのだが、今年中とはまた頑張ったな。


「各所への根回しも滞りなく済んでおります。生徒たちにも数日以内に知らせる予定ですが、生徒会の人間には、殿下から事前にご提案頂いた内容で先に準備を進めて貰ってますが問題ありませんか?」


……そういえば、具体的な例とか細かいのを書いたのも出てたっけ。


「ええ。問題ありません」

「それは良かった。それと、こちらが新しい年間スケジュール表になりますのでご確認を」


そう言って渡されたものを確認すると、学園祭以外にも、俺の提案したものがほとんど行事に組み込まれていた。


「よく今年中に通りましたね」

「殿下の人徳と陛下のご意向が大きいですね」

「陛下の?」

「ええ。殿下の要望は出来る限り叶えて欲しいと仰っられまして」


父様……本当にありがとうございます。


「それと、生徒会長が賛同したのも大きいでしょう」

「生徒会長……というと、確か」

「ええ。ルナティック公爵家のご令嬢です。殿下も面識がありましたよね?」


面識自体はあったな。


何度かパーティーで、その他だど入学式の時に生徒会長として壇上で挨拶してたっけ。


紅髪の綺麗なあのご令嬢か。


「なんでも王子様のファンらしくてな。まあ、あいつは優秀だから王子様も楽できると思うぞ」


ドレッド先生が優秀だと言うのならそうなのだろうが……そういえば、きちんと話したことはなかったな。


まあ、学園祭やるなら話すことにはなるか。


発案者だし顔出しくらいはしないとだもんな。


何にしても、家族や婚約者達と楽しめるイベントが出来たのは喜ばしいことだ。


俺自身、経験のほぼない学園行事を楽しめて一石二鳥というやつだし、父様に後でちゃんとお礼を伝えに行こう。

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