第518話 才能派の意見

ルツは俺の提案したトレーニング通り、闘気を磨き始めたらしい。


既に武器に闘気を纏わせることも出来るようになったとか。


普通に考えてもハイペースだが、ルツならまあそうだろうなぁと俺も虎太郎も納得してしまう。


「ルツの坊主は真面目だからなぁ。その程度は余裕だろうぜ」


楽しげに笑う虎太郎。


「分かってるならもう少し説明を上手くなって、ルツにアドバイスしてあげなよ」

「そりゃ無理だろ。俺や坊主の兄貴は気がついたら使えてたからな。坊主も一応そっち側だろ?」

「俺はちゃんと段取りを経て会得したから」


たった三日で発現させたという意味は中々に重い。


死の危険なんて生易しいレベルの地獄の扱きだったなぁ。


ダメだ、思い出さない思い出さない。


「まあ、実際坊主が教えるのが正解だろ。普通の扱きを伝えるのが上手いあの親父でさえ、闘気は説明出来ないんだからな」


半蔵の場合は才能派というのと、使う忍術の都合で説明が難しいのだろうと想像はつくかな。


「シャルティアの嬢ちゃんやシエルの嬢ちゃんなら説明できるかもだが……ルツの坊主は頑固だからなぁ」


女性不信気味と合わさって、教わるのは難しいか。


「その点、坊主は何でも知ってるしな」

「知ってることだけなんだけどね」

「知らん事の方が少ないだろ?」

「そうだと便利だよね」


実際、俺にだって知らないことはまだまだあるだろう。


日々精進も大切ということで。


「坊主は手札が多すぎるからな。実際闘気なんてほとんど使わないだろ?」

「魔法が俺の主だしね」

「俺だって物騒なのはごめんだからな。使わないならそれに超したことはないだろ」

「そうだね」


平和こそ志向ってことだろう。


「まあ、技術は磨いておいて損はないしね」

「だな。とはいえ、闘気は自分の本性が如実に出るからなぁ……ルツの坊主は溜め込んでそうでちょっと怖いな」

「まあ、大丈夫でしょ」


確かに闘気はその人の性格が出やすいけど、ルツの場合出ても生真面目なところくらいだろう。


「使えるようになったら稽古してあげてね」

「広くて坊主の力で強固な場所でならやってもいいぞ」


闘気と闘気の修練は学ぶことも多いけど、それだけ危険も大きい。


それくらいは当然だろう。


「坊主の子や俺の子が使えるようになったらまた大変そうだな」

「その時はその時でしょ」

「だな」


ちなみにこんな控えめなことを言ってる虎太郎だが、闘気については『とにかく使いまくって慣れろ』という肉体派でもある。


正しいけど、脳筋すぎる。


ルツのことだし参考にしても問題ないとは思うけど……段階は踏むべきだし、それをするのはもう少し基礎が固まってからというのが慎重派の俺の意見だ。


ラウル兄様も虎太郎と同じアドバイスをするだろうけど……まあ、才能派であり努力派でもあり、そして感覚派でもあるから仕方ない。


ハイペースで駆け抜けた俺からしたら、何事も地道にコツコツが理想だとは思うけど、人それぞれってことだろうね。

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