第516話 闘気の基本
さて、相談された以上はそれなりに有益な答えを渡すべきだろう。
そう思い、まずは基本的なことを話すことにした。
「闘気というのは、生命力をベースにした魔力とは違う力のことを一般には示すんだ。闘気が見えるのは闘気が使える者だけだ。それは分かるよね?」
「ええ。虎太郎殿や我が主が別格なのも、発現したばかりの私にもよく分かります」
別格かどうかはさておき、発現したばかりでそこまで見えるのなら大したものだ。
「さて、闘気は生まれつきの才能か後から地獄のような鍛錬の先に掴めるかの基本は二択だ。虎太郎は才能派、シャルティアは努力派って感じかな」
まあ、シャルティアもある程度才能派に近い気もするけど、シャルティアの努力を知ってるからこそ俺は才能よりも努力派だと思っている。
「ルツも主には努力派って感じかな。まあ、この歳で発現したのは才能もあったってことだけど」
「有難うございます、我が主よ」
「さて、じゃあ闘気で出来ることなんだけど……一番基礎となるのは闘気による身体能力の強化かな」
魔力の身体強化とはまた違ったものだけど、闘気のあるなしではその力にも大きな隔たりがある。
「例えば俺のこの拳」
ポスッと弱めにルツの胸に拳を当てる。
当然痛くも痒くもない避ける必要さえないそれだが、闘気のあるなしを分かりやすく伝えるにはこれが一番だろう。
「これが闘気なしの普通。んで、次のが闘気ありだけど……」
そう言って、薄く弱く闘気を纏った拳を同じように突き出すと、ルツはゾワッと背筋を震わせてそれを避けるように一歩身を引く。
「……受けなくても分かります。闘気というのがどれ程凄まじい力なのか」
「だろうね」
ルツならその程度は分かってるだろうけど、自分の力のことを正確に知るのはかなり大切だから、念の為に言っておく。
「使い手次第で悪用出来るって意味では魔法もそうだけど、先人は特にこの力を神聖視してたみたいでね。昔は発現した者……その領域に踏み込んだ人に教え込む意味で洗礼として闘気を使って指導という名目で叩きのめしたらしいけど、流石に時代が違うからね」
まあ、前世の俺は発現して3秒後には師匠に叩きのめされたんだけど……そんな真似をする必要もないだろう。
というか、嬉々として俺を痛めつけていた師匠は趣味も入ってたと思う。
めっちゃいい顔してしたし。
「ルツなら大丈夫だろうけど、鍛錬を怠らない上で使うのならちゃんと自分のルールを決めておくことが大切かな」
「分かりました」
そうして前置きした上で、簡単に闘気の修練方法も教えておく。
シャルティアやシエル達のプログラムを更に改良したものだけど……まあ、ルツなら大丈夫だろう。
真面目だし、何よりも努力を怠るような性格でもないしね。
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