第514話 秘密基地
栄枯盛衰で滅びた村というのは歴史的に見てもかなりあることだろう。
シスタシアとスレインドの中間辺りの場所にもいくつかそんな場所がある。
気まぐれでそんな場所に足を運んだ時に、使われなくなって放置されていた井戸を見つけた。
スルーしても良かったが、ふと俺の中の子供心が何かを察知した結果……数時間後にはそこは秘密基地へと姿を変えていた。
言い訳をさせて貰うと、ほんの出来事だったんだ。
誰も知らない自分だけの秘密基地というロマンは知識では知っててもそれ程欲しいとは思ってなかった。
ただ、思いついて作ってみらた存外悪くないと思えるのだから俺もまだまだ若いのだろうと少し安心する。
念の為に言っておくと、きちんとお祓いとか除霊した上で、周りの地面を補強して磐石にしてから、地盤も整えたのでリサイクルと称してもいいと思う。
それ程広くない室内は魔道具で空調を整えているので問題なく生活ができる上に、最低限の生活ができるように色々と取り付けてもある。
小さいけどキッチンもあるし、トイレもお風呂も作った。
暮らす気はないけど、作るのならそれなりに頑張ってしまうのが俺という生き物だ。
「井戸をこんな風に変えるとは、坊主も変わってるよな」
この場所のことは誰にも話さないつもりだったんだけど、虎太郎に嗅ぎ付けられてバレたので招待するとそんな事を言いながら自分ちのように寛ぎ始めた。
流石は虎太郎というべきか、このふてぶてしさは少し羨ましくもある。
「しっかし、坊主にも男心が残ってたんだな」
「残ってないとでも思ってたの?」
「いんや。ただ、こういう年相応なのはあんまりしないだろ?」
否定は出来ないけど、中身が肉体に引っ張られることは大いにあるからなぁ。
「たまにはいいでしょ」
「だな」
そう笑って虎太郎は取り付けた冷蔵庫の魔道具から飲み物と食べ物を出して更に寛ぐ。
後で補充しないとなぁと思いつつ、俺は俺で貰い物のみかんを剥いて食べながらまったりする。
我が家が一番だけど、ここはここでそれなりに悪くない落ち着き具合を感じる。
流石にずっとここは心細くて死んじゃうかもだけど、たまに気分転換に来るのはいいかもしれない。
そんな事を思いながらまったりしていた俺だったが、後に男のロマンというものが意外と好きだったらしいテオが嗅ぎつけて似たような場所をまた作ることになるとは思いもよらなかった。
いくつになっても、男は男なのだろう。
そんな風に密かに俺の周りで秘密基地ブームがきそうになったのだが……それはもう少し先の話だ。
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