第513話 ベーコンキャベツの実

ホムラとエンビの父親であるアグニから、先日のお礼にと色々と贈られてきた。


まあ、フロスト曰く、アグニからというよりは奥さんの方からの気遣いだろうとのこと。


「エルレインちゃんは本当にできた子だよね」


弟の性格と友達である奥さんのしっかりさをよく理解してるからこそ断言してるのだろうが……まあ、何にせよせっかくの贈り物だし有難く受け取る。


鉱石の類が多めだったけど、炎系統の魔石なんかもかなりあって、控えめに言っても先日のお礼以上のものがあるけど、フロストの「息子がお世話になるかもだからってことでしょ」という言葉で何となく理解はできた。


あの奥方のことだし、エンビがスワロに想いを寄せており、そのうちこちらで暮らしたいと思ってると分かっているので、お礼といいつつ、多少打算的に多めに色々贈ってくれたと。


抜け目ないというか、流石と言うべきか。


俺としても、可愛い姪の恋路を邪魔する気はないので有難く受け取りつつ、父様達へ渡す分もきちんと確保しておく。


そんな風に贈られてきたものを確認していると、鉱石類よりは少ないけどいくつか面白いものを発見する。


「ベーコンキャベツの実とはまた面白いものを」


現存してる物の中では、かなり貴重というか希少な植物でベーコンのような味がするキャベツの実なのだが、実物を見たのは本当に久しぶりだ。


ベーコンキャベツは面白いんだけど、栽培がちょっと面倒なんだよなぁ。


時間のある時に俺が育ててもいいんだけど……俺以上に欲しがりそうなアンネの姿を思い浮かべたので後で持っていくとしよう。


最近はガーデニングの守備範囲が広がって野菜まで育ててるようだし、ベーコンキャベツを渡せば喜んで育てるだろう。


一応アンネはヌロスレアの王女様だ。


王女様としては土弄りというのは世間体的に見ればあまりいい顔はされないのだろうが、婚約者の俺がこんなんだし、意外とお似合いなのかもしれない。


俺としてもアンネの趣味を理解できるし、会いに行くと大抵手伝ってるので今更だが……なんていうか、アンネは本当に明るくなったと思う。


アンネだけじゃなくて、他の婚約者達も出会った時よりも生き生きしてていい。


俺のおかげ……なんて自惚れる気はないけど、それでも多少は役に立てたのなら嬉しいものだ。


しかしそのうちヌロスレアの屋敷の庭だけでは足りなくなるくらいに育てそうだし、近くの土地も確保しておくべきだろうか?


ヌロスレアの屋敷はかなり広い土地なので問題ないとは思うが……うん、一応検討しておこう。


なお、持っていったベーコンキャベツにはかなり喜んでいたので渡したかいはあったというものだ。


適材適所、欲しい人に渡すべきだよね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る