第510話 初恋談義
「まあ、スワロさんがですか」
「うん、微笑ましかったよ」
ホムラとエンビを母親の元に戻してから、屋敷に帰ると流れでそんな話にもなった。
婚約者たちなら言いふらすような事はないだろうし、フィリアなら尚更言わないだろうから言ったけど、小さい頃から知ってるスワロの初恋になんとも微笑ましそうな表情を浮かべた。
「確かにスワロさんは大人びてましたからね。それに気持ちは分かります」
「そう?」
「私もシリウス様に一目惚れしましたから……」
……照れる。
考えてみたら俺もそうだったし、血というのは争えないのかもしれない。
「……私も一目惚れだったかも」
「そうだったか?」
「……シャルティアはその辺の情緒があれだから分からなかっただけ」
「そんな事は……私だって、出会った瞬間にシリウス様が我が主と気づいていた」
「……はいはい」
一目惚れかはともかく、確かにセシルは出会った時から割と距離が近かったなぁ。
「私はその……唇と一緒に心も奪われましたから……」
「羨ましいなぁ」
照れるフローラに心から羨ましそうにそう言うのはエルフ姉妹の妹のセリアだ。
ハーフエルフのソルテもこくりと頷いている。
「まあ、初恋っていうのは本当突然起こるものよね。私も長く生きてきてシリウスが初めてだし」
「よく分かります」
エルフ姉妹の姉のスフィアの言葉に、照れつつも頷く獣人族のクーデリン。
「まあ、そうだよね。長く生きてもこうして実際に会うまで自分が恋するなんて思わなかったし」
フロストはスフィアの言葉に同感するように頷いている。
……自分から話を振っておいてなんだけど、全部自分との事と考えると余計に照れくさくなるなぁ。
とりあえずこの場にラナや茜が居ないというだけでもっと恥ずかしくなることはなさそうだ。
ヌロスレアに住んでるアンネやアリシアはどちらかといえば穏健派なので照れる話はそんなに出てこないとは思う……ないよね?
ダークエルフのシエルも真面目な顔で参加してきそうだけど、今日は見回りの日なので早めに食べ終えて出ていってる。
見回りをしたいとシエルが真面目な顔で言い出した時は驚いなぁ。
まあ、少しでも役に立ちたいと言われたら断れないし、無理をしてないのなら問題ないだろう。
俺も見回りと称して街を回るの好きだし、シエルも案外楽しんでるようだしね。
そんな事を思いながら、女子会のノリになっていく婚約者たちの中にさらりと混ざっていた俺だったが、自分の気持ちを口にするのは恥ずかしくないのにこうして好きな人から間接的に伝わるのは中々照れるとよく分かった。
悪い気はしないけどね。
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