第509話 初恋を目撃

色んな店を回り、お昼を食べて午後になったので今度はスレインドの王城に転移する。


ホムラとエンビの二人と、我が姪のティファニーやスワロを会わせるためだ。


他の子達とはまた今度会わせる予定だが、ホムラやエンビとならきっと仲良くなるだろう。


「おじちゃまー!」

「ぐほっ!」


転移した瞬間、ティファニーと召喚契約をしている亀のウラシマが頭上から降ってきて、それを受け止めた瞬間に懐に飛び込んでくる我が姪ティファニー。


陽動とは……ウラシマのお陰で戦術がどうやら広がったらしい。


恐ろしい姪だ。


「兄ちゃん、大丈夫か?」

「大丈夫。いつもの事だから」

「いつもなんだな。んで、こいつが兄ちゃんの姪子ってやつか?」

「そうだよ。ほら、ティー、スワロ。挨拶できるよね?」

「あい!」


そう言ってからまずは先にティファニーが挨拶をする。


「初めまして!おじちゃまの妻のティファニーです!」

「え?妻?姪じゃねぇの?」

「ティーは、おじちゃまの妻で姪でもあるの!」

「そうなんだ。俺はホムラだ!よろしくな!」

「うん、よろしく!」


色々と疑問の残ってそうな自己紹介だったけど、ホムラは気にしないでそう元気に挨拶をする。


この二人は予想通り波長があってそうだな。


さて、残りの二人だが。


そう思って、黙っているスワロとエンビに視線を向けると二人は黙って見つめ合っていた。


あまり人と話すのが得意な方ではない二人なので緊張してる……という雰囲気ではないのに少し驚く。


そう、まるで……運命の人に会ったような互いに互いしか見えてないような見つめ合い。


……これ、ひょっとしたらひょっとして?


「ほら、挨拶しろって」

「あ……えっと……」


ホムラの言葉になんとか現実に帰ってくると、エンビはいつも以上に緊張しながらしばらくもごる。


「えっと……エンビ……っていいます……」

「……スワロです」

「スワロ……えっと、可愛い名前ですね……」

「……ありがとう」


頬を赤くしてそんなやり取りをする二人。


鈍くない叔父はそれだけで初恋の気配を察知してしまう。


所謂一目惚れというやつだろう。


そうか……スワロにも良い人が出来るのかもしれないのか……微笑ましいなぁ。


「エンビ?なんで赤くなってんだ?」

「おねえちゃんも」

「な、なんでもないよ」

「……うん、なんでもない」

「そうなのか?」

「そうみたい」


恋だ愛だにまだ早い二人はいつもと違う二人に首を傾げるけど、次にはウラシマや俺の話で盛り上がり出す。


こっちが年相応なのだろう。


スワロとエンビは照れて話が続かないようなので、折角だし図書室を案内したらとスワロに提案してみる。


本の話ならスワロも色々話せるだろう。


しかし、可愛い姪の初恋を目撃することになるとは……長生きはするものだね。


まだ今世の俺は御歳10歳だけど。

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