第506話 三男歌丸
三兄弟は予想通りの振り分けでスレインド、シスタシア、ヌロスレアと分かれて雇われることになった。
せっかくなので、前世の時に烏天狗族が使ってた人化の術を教えたところ、三人ともすんなりと覚えてそれぞれ人の見た目(翼以外)になっていたが、それぞれ個性が出つつも顔立ちの造形がそっくりだったのは流石だと思う。
「シリウス様。遊びに来ましたよ」
我が故郷、スレインド王国で雇われることになったのは三男の歌丸。
マイペースな性格ではあるが、根は真面目なのかしっかりと日々仕事をしてるという話を兄様達からは聞いている。
その歌丸は休みの日に俺の元に顔を出してくるようになった。
最初に話した時に気に入られたのかもしれない。
「歌丸、仕事の方は大丈夫そう?」
「ええ。上二人が来なければ何もやらかしませんからねぇ」
上二人が来れば何かしでかしてしまうと悟ってる口ぶりだ。
それだけ歴史を重ねてきたのだろう。
本人達的には仲良くしたいし、心底嫌ってるわけではないけど、ただただ相性が悪いというのは難しいものだ。
そういう点では今世のうちは本当に恵まれてると心底思う。
女神様、本当にありがとうございます。
「それで今日は照り焼きチキンありますか?」
「来ると思って作っておいたよ」
「流石、シリウス様。敬愛しております」
歌丸はこの前振る舞った照り焼きチキンを大層気に入ったようで、顔を出す度にこうして聞いてくる。
俺としても、歌丸が持ってくる話は割と面白いのでついでに照り焼きチキンを作りおいておいてるのだが……甘いだろうか?
でも、その辺人の懐に入り込むのが上手いのか、嫌味なところがないのが歌丸の凄いところだ。
末っ子属性というやつだろうか?
俺には備わってなさそうなのでちょっと羨ましい。
「パンにもお米にもあって美味しいですよねぇ」
照り焼きチキンに思いを馳せる歌丸。
「……それにしても、歌丸は本当にその姿が気に入ってるんだね」
人化の術は種族によって異なるが、それなりに難易度が高い。
その上で、その人の性格がよく出るのだが、意図的に弄ることも人によってはできる。
普通に人化するよりも意図的に弄るのはそこそこ難度が高いのだが、歌丸達は割と直ぐにそれらをマスターしていた。
その証拠に、長男の市丸は狐のような細めのにこやかな青年になり、次男の蓋丸は武人のような厳つさを持つ青年になった。
さて、三男の歌丸なのだが……上二人と造形は一緒だが全体的にふっくらとさせており……まあ、所謂ぽっちゃり系になっていた。
別に太ってる訳でもないのにそうした姿になった理由。
「そりゃあ、そうそうですよ。人間、ちょっとぽっちゃりとしてる方が可愛いですからねぇ」
歌丸の趣味によるものだ。
女性の趣味もぽっちゃり系が好みらしい。
何とも面白い男だ。
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