第504話 シスタシアの理由

「それにしても、シリウスのことを知ってるならうちじゃなくてシリウスの元に行った方が話が早かったんじゃない?色々知ってるんでしょ?」


烏天狗の長男、市丸の話を聞いてからそんな事を聞くヘルメス義兄様。


そういえば、市丸は俺の事を知ってるみたいだったな。


「色々と言える程は知りませんが、第3王子殿下が他種族に寛容とは伺ってます。そちらにも行きたかったんですが……」

「うんうん」

「その……第3王子殿下は優しい反面、好色家でもあると聞いてるので、紹介できる身内が居ない私たちでは相手をして貰えないんじゃないかと」


贄でも差し出させてそうな情報が伝わってそう。


そんな真似したことないんだけどなぁ。


「なるほどねぇ。でも、それでなんでうちなんだい?」

「第3王子殿下の母国のスレインド王国はこの国最大の大陸で、第3王子殿下の影響か他種族にも寛容だと聞いてますが、そんな大国だとますます相手にされないかと思いまして」

「僕は与しやすいと?」

「いえ、空の警備などシスタシアの方が良い条件を出してくださるのではないかと思いまして」

「そういう事か」


確かにヘルメス義兄様ならというのは分からなくないかな。


誤解があるとすれば、そういう点では父様やレグルス兄様も寛容だということだろうか。


「話は大体分かったよ。とにかく君たちは仕事と住処と食事が欲しいと」

「そういう事です」

「うん、それなら前向きに検討するよ。空の警備は前から考えてたしね。ただ、全員は雇えないかな」

「……ですね」


三人顔を合わせると喧嘩となれば、その判断は間違いなく正しいだろう。


「だから、一人をうちで雇って、他の二人は他国に推薦することになると思うけど……それでも良いかな?」

「それは有難いですが……いいんですか?こんな素性の知れない他種族をそんなあっさりと信じて」

「まあね。疑念がないいえば嘘になるね。僕以外の家臣たちなんかの説得はちょっと大変そうだ。でも、ここにいるうちの可愛い義弟が問題ないと思ってるみたいだからね。僕も同じ意見だし」


流石はヘルメス義兄様。


口にしてないのに心を読まれた。


それ程分かりやすかっただろうか?


「他の二人にも話を聞いてからになるけど、問題ないかな?」

「勿論です。ありがとうございます」

「うん、ならもうしばらくこの部屋でゆっくりしててね」

「分かりました」


そう言って部屋を出ていくヘルメス義兄様。


俺としても聞きたい話はほぼ聞けたし、他に用事もないので一緒に部屋を出る。


ヘルメス義兄様としても外で俺に話したいこともあるだろうしね。

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