第501話 3羽の烏
早朝、シスタシア城の敷地内に、上空から3羽のカラスが落ちてきた。
ただのカラスならそれ程問題はなかっただろう。
問題はそのカラスが人型で、尚且つ明らかに亜人種の類であったということ。
「朝から悪いね、シリウス」
シスタシアに張ってる結界に入ったその反応を察知して、ヘルメス義兄様に連絡したところ、すぐに来て欲しいとのことで朝食もそこそこにシスタシアへと転移で飛んだのだが、朝からヘルメス義兄様は爽やかな笑みを浮かべて迎えてくれた。
うちの家族は比較的朝に強い。
健康的で、文化的な生活をしてるのに加えて、朝から色々と用事で忙しいというのもあるのだろう。
お仕事本当にお疲れ様です。
「いえ。それでそのカラス達は?」
「念の為に軽く治療をして、それぞれ隔離してるよ」
普通の侵入者ならそこまでしたか分からないけど、相手は亜人種で尚且つ、空から落ちてきた。
悪意を持って入り込んできた訳ではないので、治療をして話を聞くのは分かるが……隔離か。
「何かあったのですか?」
「何かっていう程のことは起きてないよ。向こうもこちらの話を聞く気はあるみたいだし。ただね……」
「ただ?」
「その三人、なかなか仲が悪いみたいなんだ」
落ちてきた時には気を失っており、起きても比較的大人しかったのだが、三人が目を覚ますと些細なことで喧嘩がはじまったらしい。
何度止めても喧嘩になり、話をするのも大変ということでそれぞれ別室に隔離してるらしい。
「軽く話を聞いた感じ、彼らは三兄弟らしいよ」
「三兄弟ですか」
「シリウスの所と一緒だね。まあ、シリウスには他にも実の姉が二人に、義兄や義姉が沢山いるけど」
「ですね。皆さん尊敬してます」
そう答えると微笑ましそうに頭を撫でられる。
「うん、こういう感じの弟だから皆可愛がるんだろうね。僕も同じ気持ちだし。それにしても、兄弟仲か……喧嘩するほど仲が良いだといいけどね」
そう最後にポツリと呟くヘルメス義兄様。
俺としてもそっちの方だと良いなぁと個人的にも思う。
ただ仲の悪い兄弟なんて腐るほどいるけど、家族として情が通ってる方が嬉しいというのは誰もが思うことだろう。
今世の俺は幸いなことに家族に恵まれた。
立派な父様に、優しい母様、尊敬できる兄様、姉さまに、義兄や義姉様達も含めると片手の指に収まらないくらいには尊敬してる人が居ると言っても過言ではないだろう。
無論、話をする上で仲良しな方が何かと話もしやすいという打算的な思惑もなくはないが……どうせなら喧嘩するほど何とやらという方がね。
まあ、なんにしても、まずは話を聞いてみてかな。
俺の結界を通れたってことはこの国や俺の大切な人達への悪意や敵意は持ってないってことだし、話ができるのなら何とかなるだろう。
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