第492話 変わった侵入者
その日は、レグルス兄様のお呼び出しで、王城に顔を出していた。
「わざわざ、すまないね」
「いえ。それで件の侵入者は?」
「事情が事情だからね、少し離れた牢に入れてるよ」
何の話かといえば、昨夜王城の宝物庫に侵入者が入り込んだそうだ。
幸い、何かを取られる前に確保出来たそうだが、それでも城の宝物庫に入り込んだというのはかなり凄いことだ。
スレインド王国の王城の警備はかなりしっかりとしている。
父様や兄様が優秀なのは勿論、俺の技術供与でこの大陸でも屈指と言っていい堅牢さを誇っていると思う。
そんな中に容易く入り込み、宝物庫まで辿り着いたということでかなり大きなことなのだが……問題はそこではなく、入り込んだ侵入者の特徴にあった。
「僕らの見たことの無い種族みたいでね。裁くにしろ取り調べるにしろまずはシリウスの知識を借りたかったんだ」
今の人族は他種族との交流が少ない。
俺の周りにこそ多種多様な種族が増えてはいるけど、そのどれにも当てはまらない種族の者が城に忍び込んだ。
そうとなれば、何故か変なことに詳しい弟に聞くのが早いだろうというお呼び出しだろう。
「毎度、頼ってすまないね」
「いえ。むしろお役に立てるなら遠慮なく使ってください」
前世のように使い潰されるのは嫌だけど、うちの家族がそんな事をするとは思えないし、思わない。
むしろ、何だかんだといつも俺が面倒事を持ってきて迷惑をかけてるのでこの程度はね。
「侵入者は例の牢ですか?」
「うん。シリウスが作った他種族用のやつに入ってもらってるよ」
昔、念の為にと作っておいた様々な種族に対応した牢屋があるのだが、そこに入っており今のところ問題ないとくれば俺の知ってる種族の可能性が高そうだ。
「弥生が良い仕事をしてくれてね。流石は茜さんの姉弟子だね」
侵入者をいち早く発見して、捕らえたのは茜の姉弟子の弥生というくノ一らしい。
俺は一度会ったきりだけど、茜の紹介でレグルス兄様の元で働いてると聞くが、かなり活躍してるようだ。
「ああいうストレートなタイプは相手をしてて楽しいね。優秀だし囲っておいて損はなさそうだ」
「随分とお気に召したようですね」
「まあね。あ、でもシリウスはあんまり会わない方がいいだろうね」
茜が嫉妬するという意味か、はたまた年齢制限的なものなのか。
両方な気もするが、俺が会う理由もないし気にしないでおく。
「ここだけの話ね。ラウル兄さんの困ったような顔が見れるのも意外と楽しいんだよね」
そうこっそり微笑むレグルス兄様。
いつも堂々としてて、二カッとしているラウル兄様の困り顔は確かにレアかもしれないなぁ。
逆にあのラウル兄様にそんな顔をさせる弥生というくノ一の底が知れないけど……まあ、レグルス兄様がコントロール出来てるみたいだし大丈夫か。
流石レグルス兄様だね。
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