第483話 穏やかなデート

だいたい月一くらいのペースで、俺はフィリアと領地デートをすることにしている。


公務という訳じゃないけど、俺とフィリアの仲の良さをアピールする意味でも、俺の息抜きという意味でもこのデートはかなり大切だ。


無論、これ以外でもフィリアとは時間を作ってデートをしているのだが、何だかんだと領地での二人きりのデートはデートで楽しいものだ。


お忍びというよりは、恒例行事のようなこのデートでは新しく出来たお店に行ったり、俺やフィリアが気に入った店に顔を出したりしているのだが、街を歩くだけでも二人で歩くと違った景色に見えるから不思議だ。


「ラナさんの新しいお店、お料理とっても美味しかったですね」

「だね。また行こうか」

「はい」


嬉しそうに微笑むフィリア。


手を繋いで歩くのにも慣れてきてるはずだが、こうして隣に大切な人がいると思うと不思議と心が温かくなる。


満たされてるってこういう事なのだろう。


そんな風に和やかな雰囲気で話していると、見知ったお店がいつもより賑やかな様子なのに気がつく。


「何かあったのでしょうか?」


首を傾げるフィリアと俺だが、少し考えて俺は前にその店の店主が言ってたことを思い出す。


「そういえば、今日はトムさんのお店がカップル限定メニュー出すって言ってたっけ」

「カップル限定メニューですか?」

「そう。なんでもラブラブなカップル程サービスしてくれるらしいよ」


俺とフィリアの月一領地デートに合わせてくれた訳ではないだろうが、デートの日にそういうイベントがあるのは有難い。


「せっかくだし、行ってみようか」

「はい」


店に行くと、待ってましたと言わんばかりにいつもの席に通される。


……訂正、どうやら俺たちのデートの日に合わせて開催したのだろう。


「是非とも、お二人のラブラブパワーでお力添えを」


そう小声で店主のトムさんがお願いしてくる。


やり手の店主は今日も絶好調なようだ。


まあ、サービスしてくれるのなら文句はない。


早速、カップル限定メニューを頼むと、出てきたのは二人で飲むハートマークのついたストロー付きのドリンクと、この領地特産の白銀桃をふんだんに使った、ハートマークたっぷりのパフェのようなもの。


なるほど、カップル限定メニューとはその通りだなぁと思いつつ、照れるフィリアとゆっくりと顔を合わせてジュースを飲む。


視線が合うたびに照れたように微笑むフィリア。


……可愛すぎません?


「お、美味しいですね。シリウス様」

「だね。好きな人と飲むと余計にそう感じるよ」


その言葉に照れてはにかむフィリア。


その笑みがまた余計に俺の心を捉えて離さない。


こうして触れ合う度に思う。


初恋パワーというのは凄まじいものだなぁと。


割とオープンな席だったので、俺とフィリアの甘いやり取りは多くのお客さんたちに見られていたようだが、位置の関係でそれを把握してるのは俺だけだったのでそこは良かったのかもしれない。


なお、お土産に渡されたカップルストローは俺が前に試作品を見せたやつの改良版だったのだが、店主のセンスが良くて更にクオリティが上がってたので有難く貰って使わせてもらう。

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