第479話 姪の進化は加速する

「おじちゃまー!」


城に転移するとすぐにその姪の声が横から聞こえてくる。


相変わらずランダム出現の俺を天然の勘で捉えたことに驚くよりも、余裕を持って受け止めようと構えるが……その努力は無駄に終わる。


「かそくー!」


その言葉に相違なく、突撃してくるティーの速度が跳ね上がる。


まさか……魔法か!


「とうー!」

「ぐっは!」


いつもよりも速く高威力なそれを何とか止めるが……まさか加護紋の力で加速するとは予想してなかった。


いや、ティーが加護紋と割と相性が良いのは知ってたけど、まさかここまで使えるようになってるとは。


子供の成長は凄まじいなぁ……。


「御機嫌よう、おじちゃま!」

「……ティーよ、熱烈なお迎えありがとう。でも、人に向かって魔法で加速はなしだよ」

「あい!おじちゃまにしかしない!」


二次被害が出ないなら良しとすべきか?


姪の素直さはよくわかってるので、この笑顔でついつい許してしまう俺は甘々なのかもしれない。


まあ、そもそもティーは加護紋の使える力を俺の前以外では使わない(加護の繋がりで使えば分かる)から安心といえば安心だけど、一応セーフティーをかけておいて正解だったか。


「おじちゃま、お時間ある?」

「大丈夫だよ。今日はティーやスワロに会いに来たし。スワロは?」

「新作読んでるー」


そういえば、この前新しい本を渡したっけ。


すっかり本の虫になってるけど、たまには運動に連れ出すべきか。


いや、それはティーがやってるし俺は俺で出来ることをすればいいか。


「おじちゃま、おじちゃま。みてみて」


よしよしと無意識に頭を撫でてると、思い出したようにティーが足元に子亀を召喚してみせる。


……いつの間に召喚魔法まで使えるようになったのやら。


しかも俺の召喚契約に居ない子亀だ。


「この子どうしたの?」

「この前ね、迷い込んできたの!」


荷物に交じって入ってきてしまったらしい。


普通はそんな事は起きないのだが、この子亀が聖獣の子供だからティーの所までたどり着けたのだろう。


くいくいと子亀が俺の足の袖を引っ張る。


何かと思えば、子亀は剥がれた甲羅のかけらを差し出してくる。


家賃代わりとでも言うような感じで渡してくるけど……賢い子だなぁ。


「ありがとう。これからもティーをよろしくね」


そう言って撫でるとこくりと頷く。


受け答えまで出来るとは凄いな。


「ティー、この子の名前は決めたの?」

「うん!ウラシマだよー」

「そっか。仲良くするようにね」

「もちろんだよー」


よしよしと頭を撫でるとくすぐったそうに笑うティファニー。


ウラシマというネーミングに突っ込むべきか迷ったけど、多分インスピレーションで決めたのだろうし深くは問うまい。


しかし練習もなしにほぼ一発で召喚契約したと考えると本当にティファニーは天才なのかもしれない。


将来が楽しみだ。

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