第475話 悪くないポジション

「スフィア、お茶にしようか」

「ええ、ありがとう」


書類仕事が一段落したので、スフィアと一緒にティータイムと洒落込む。


領地のことは成人まではある程度スフィアが代行してくれてるけど、俺もやるべきことはきちとんやる。


任せ切りでは悪いしね。


「今日はあの忍者の子出掛けてるの?」

「忍者って……茜のこと?」

「そう。だって、居ればいつもこういうタイミングでしれっと割り込んでくるでしょ?」


確かに。


影による移動で混ざってくることがあるなぁ。


「今日は確か母様の用事だね」


今日だけ貸してほしいと母様に頼まれたのを思い出す。


「便利だもんね。あの子」

「そういえば、スフィアも前に何か頼んでたよね」

「少しね。向こうの領地の代官に急ぎで渡す手紙があったのよ」


「まあ、私もそのうち完璧に転移覚えるけど」と楽しそうに笑うスフィア。


意外なことにスフィアはまだ加護の力による転移を自由には使えない。


魔法に長けてるし、エルフの中でも特に才能もあると思うんだけど加護の転移は勝手が違うようで長距離は成功させられてなかった。


「あ、でも小物なら成功率上がってきたんだ」


そう言って、手に持ったペンを俺の手元に転移させてみせるスフィア。


「上手くなったね」

「当然。長生きしてる分魔法で遅れは取りたくないしね」


ふふんと得意げな様子が微笑ましい。


「魔法の指導はスフィアに頼むことになりそうだね」

「指導って……誰の?」

「俺たちの未来の子供とか?」


そう口にすると、ちょっと頬を赤らめて視線を逸らすスフィア。


照れ方も分かりやすくて可愛いものだ。


「そ、そういえば私達の子供っていえばなんだけど」

「うんうん、何かな?」

「フィリア様の子供がここの領主と家督を継いで、他の子がそれを支えるとして、私の子が参謀役……というか、相談役になっても問題ないわよね?」

「構わないよ。それを本人が望むならね」


無理強いはしたくないけど、望んでなってくれるなら全力で応援すると答えると、スフィアはくすりと笑って言った。


「なら大丈夫そうね。きっとそうなるから」

「やけに自信満々だね」

「私達の子供ならそっちを選ぶと思うわよ。私に似れば特にそうなるだろうし」

「外を飛び回る子になるかもよ?」


知的好奇心が旺盛なのは多分間違いないと思う。


そんな俺の言葉に確かにと苦笑しつつ、スフィアはさらりと言った。


「二人目はそういう子になるかもね」


ふむふむ、二人目か。


……既に二人は産む決心をしてるのだろうか?


嬉しいけど、妊娠も出産も大変なものだし、無理はしないで欲しいな。


そんな風に和やかに未来の話をしてから、スフィアが軽く休むというので寝るまで傍に居ることに。


いつも頑張ってくれてるし、このくらいはね。

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