第470話 銭湯の良さ
銭湯は領民達に好評だった。
好評過ぎて、一つでは足りなくなったので公共施設して増築していく。
温泉地のように天然ではないが、皆で広い風呂でワイワイやれるのはかなり楽しい。
何故俺の主観が混じってるのかって?
お忍び(にはなってないが一応お忍び)で俺も領民に混じって使う時があるからさ。
「しかし、坊主もつくづく変わり者だよな」
今世の俺と違って、ガッツリと鍛え上げられた腹筋や胸板を晒しつつ、頭にタオルを乗せて隣で湯に浸かる虎太朗がそんな事を言う。
「どの辺が?」
「全部」
なんて大雑把な。
その言葉に苦笑しつつ、一緒に湯に使ってる才蔵も虎太朗に続くように言った。
「器が大きいというか、なんと言うか……普通居ませんからね。領民達とお風呂に入るお貴族様なんて」
「居ちゃ不味いでしょ」
貴族と平民、立場的にも心身含めた安全面的にも普通は同じ湯に浸かるなんてことはない。
「オフレコで宜しくねー」
念の為、そう近くのおっちゃん達に軽く言うと、気の抜けた返事が返ってくる。
暗黙の了解ということで。
「はっはっは!本当に凄まじい方ですな!虎太朗、お前が仕える気持ちよく分かるぞ!」
「痛えって、叩くなよ」
虎太朗、才蔵の他にこの場には半蔵も居るのだが男の裸ばかり見てるとフィリア達が尚更恋しくなる。
帰ったら心を癒してもらおう。
この場に居ないテオは、本日は温泉地に行ってるらしい。
奥さんと混浴とは羨ましいものだ。
「とつげきー!」
「こら、飛び込まないように」
悪ガキが風呂に飛び込もうとしたので、魔法で静止してお湯を掛けて洗い流してからゆっくりと着水させる。
「すみません、領主様」
脱衣所から慌てて子供を追ってきた保護者らしきお父さんが慌てて頭を下げてる。
見ない顔だけど、最近来た人かな?
「構わないよ。お父さんも大変だね」
「ごめんなさーい」
子供は魔法に驚きつつも、お父さんの様子から一緒に頭を下げてる。
結構いい子だね、お風呂にテンション上がってた感じか。
「次からは気をつけなよー」
「はーい」
そんな風に軽く子供をあしらっていると、才蔵が虎太朗にポツリと尋ねた。
「……虎太朗さん。シリウス様ここに慣れすぎでは?空気的な意味で」
「坊主だからな」
「それ理由になってます?」
「まあ、あの自然体が坊主だからな。慣れろ」
「努力します」
そんな外野はさておき、風呂上がりは何を飲むか。
牛乳、フルーツ牛乳、コーヒー牛乳……etc。
うん、今日は普通の牛乳の気分。
ジュースやお茶もいいけど、銭湯の風呂上がりは牛乳系列が合うと思うのは俺だけだろうか?
大人モードだったらお酒も可だけど、銭湯だからこそ瓶の牛乳やコーヒー牛乳があうよね。
古き良き伝統というやつかな。
テンプレはテンプレだからこそ良きということだろう。
郷に入っては郷に従えというし、形は大切ということで。
しかし、どうせなら次は変装でもしてくるか。
顔バレしてると気を使う人もままいそうだし、邪魔したくて来てるわじゃないから、どうせならゆっくりとリフレッシュしてて欲しいものだしね。
まあ、俺の意向を組んで気にしてない人が大半なんだけど……それはそれ。
気遣いも必要ということで一つ。
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