第465話 茜の進化と忍親子

茜達が来てから数日。


適応能力の高さが伺えるくらいに、三人は領地に馴染んでいた。


半蔵には新設した諜報部隊の指南役を、才蔵にはその諜報部隊のまとめ役をやって貰っている。


住んでいるのは屋敷近くの空き家だが、かなり広くて立地的にも悪くない。


「むしろ、前の家よりも大きくてびっくりしました」


そう苦笑する才蔵だけど、たまたま空いてた空き家なので気にせず使って欲しいものだ。


「過去一仕事が楽しくて、酒も美味い。有難い限りです」


若い諜報部隊のメンバーを鍛えるという仕事は前とはかなり仕事内容が違うはずだが、半蔵は楽しそうにそんな事を言う。


何だかんだと教官役が気に入ったようで、それぞれにあった扱き方をしてるようだ。


なお、息子の才蔵にはその数倍のメニューを課してるが、実力的にも仕方ないのでスルーで。


半蔵と才蔵のこちらでの家は虎太朗の家に近い。


そのためか、半蔵は時々虎太朗を誘って飲みに行ってるらしい。


テオも混じって三人で飲むこともあるようだが、どっちも家庭があるので近所の飲兵衛な親父達と飲むか、一人飲みで姿を見かけることも多いようだ。


楽しんでるようで何より。


才蔵はルツと仲良くなったのか、時々話してるのを見かけるが運命の人にはまだ会えてないようだ。


ここでの出会いなのかは不明だが、会えるといいね。


そして、茜だが……案の定、屋敷に住んだことで周りからは新しい婚約者として扱われてるようだ。


「シルくんの女アピールもっとしてもいい?」


そう楽しそうに聞かれたのだが、メンタル強すぎでは?


茜も諜報部隊の一員になって貰おうかと思っていたんだけど、茜はあくまで俺のくノ一でいたいということなので、影からの護衛と俺の私的な諜報を頼む特殊な立場になって貰った。


一応、万が一の時に新設した隠密部隊の指揮を取れるように特殊な権限も持って貰うつもりだが、あくまで念の為なので問題ないだろう。


茜は加護紋によって、俺の使える力……とりわけ、前世で会得した茜の知らない忍術も使えるようになったようで、影による移動法をマスターした。


この影移動、かなり便利だけど使う時に使用する力の消耗もかなりのものなのだが、俺の加護によってほぼノーリスクで使い放題なので茜の行動範囲はかなり広くなった。


俺の行く場所ほぼ全てにアクセスできるし、影に潜むことで前よりも隠密に磨きがかかり、結果としてくノ一として前以上に有能になったけど、俺へのイタズラに利用するのは控えるように。


風呂に忍び込もうとした時は本当にびっくりしたよ。


「そういうのはダメだから」


バッテンを作って注意しておいたけど、俺個人としては別に茜に見られるのが嫌なわけではない。


だが、フィリア達にさえ全裸は見られてないし、そういうのは順序が大事と分かってるのでちゃんとすることはちゃんとする。


「シルくん乙女みたいだね」


その感想はやめてほしい。


清い体という訳ではないが、何事も風紀は大切ということで。


そんなイタズラをする以外は話もあうし、婚約者達とも仲良しなので俺としては文句はない。


茜の存在で俺の周りがまた賑やかになったのと……茜も混じって前よりも積極的になってきたフロストやクーデリン達への気持ちも定まってきた。


するべきことはちゃんとしないとね。

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