第463話 面白系お父さん

「ふっ……やるようになったじゃねぇか。虎太朗」

「これでも守るもんが出来た男だからな。前みたいに無様には負けらねぇぜ」


虎太朗と茜の父半蔵の戦いは引き分けと言っていい形で決着した。


とはいえ、あれだけ殴りあってまだお互いに余力を残してる辺り大したものだ。


「虎太朗、お疲れ」

「坊主の方は速くに片付いて楽しそうだったな」

「見てたんだ」

「見てなくてもそっちのすっかり口説かれた茜を見てれば分かるだろ」


口説かれたとは人聞きの悪い。


まあ、確かに勧誘はしたけど。


「タロくん、久しぶり」

「茜か。案の定坊主と相性良かったみたいだな」

「まあね。シルくんだけのくノ一になるって決めたからね」

「そうかい。まあ、何にしてもこれからまた、たまに顔を合わせそうだな」


和やかな様子の虎太朗と茜。


旧交を温めてる邪魔はすまい。


「シリウス殿下。このような形で御前を拝する無礼をお許しを」


なので、次は半蔵のスカウトに視線を向けると、事情を息子の才蔵から聞いたのか先程までの野性味溢れる様子から一転して、歴戦の忍頭の様子を見せた。


「堅苦しいのは好かない。楽にしてくれ」

「御意。して、我々を雇ってくださるそうで」

「娘さんと息子さんの方はスカウトに成功しててね。半蔵にも来て欲しいんだ」

「忍として、主に仕えるのは苦ではありませんが、一つだけ確認を」

「何かな?」

「私めに与える仕事にはどの程度暗殺が含まれますか?」


ゼロの予定だけど。


流石にそこまでの説明は才蔵から受けてないか。


「俺の領地でその手の仕事をさせる気はない。勿論、茜にも才蔵にもだ」

「人を殺めることが最も私には向いてるんですがね」

「それ以上に適任そうな役職を渡そうと思ってる」

「と言いますと?」

「情報収集などを専門とした部隊を新しく新設する予定だ」


俺の子供達の世代のことを考えると、俺の力に頼らない情報収集の方法も必要だろうし、茜達との出会いで光明も見えた。


「その新設する隠密部隊の教官を半蔵に任せたい」

「私がですか?」

「虎太朗、茜、才蔵とこれだけの才を育てたんだ。半蔵は教官に向いてると思うよ」


その言葉に才蔵が頬をひくつかせていたが、話を聞く限り、半蔵は後任を育てるのに適任だと判断した。


「よもや、そのように評価してくださるとは……」

「どうかな?」


その言葉に半蔵はニヤリと笑みを浮かべると深く頭を下げて言った。


「この身に掛けまして。新しい主君である、シリウス様のご期待に答えて見せましょう」

「うん、よろしく」


とりあえずスカウトは成功かな。


ただ、虎太朗達とのやり取りの落差で変な温度になるから普通にして欲しいなぁ。


まあ、それはそのうち叶えばいいか。


近くの才蔵が、扱かれるリストに自分が入ってるのかどうかを必死に確かめたいように表情を白黒させてたけど、必要なら受けるといいと思うよ。


最も、才蔵は現時点でもかなりの忍だし、磨くなら戦闘能力よりもメンタル面な気もするが、その辺はご家族に任せるとしよう。

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