第462話 才蔵の好み
一通り、残りの事情を把握した才蔵は俺の領地に来て欲しいという誘いにすんなりと乗ってくれた。
「願ってもないです。いつかは仕事が欲しかったですから」
茜達は前の職場でかなり良い地位には居たので、個人資産もそこそこあるようだが、それでもこの先底が尽きないかと言われると不安がない訳でもないらしい。
「父も多分快諾すると思いますが、お給金は弾んで貰えそうですか?」
「そうだね。とりあえずはこんな所でどう?」
「え?そんなにですか?」
提示した額は茜達の実力を考えて適性なものだと思ったけど、想定よりも多いと感じたのか驚きの声が返ってくる。
「成果によって上に変動するだろうけどね。あと、暗殺とか危ない潜入系はあんまりないかも」
三人に期待してるのはドロドロした暗い仕事ではないとだけ明言しておく。
そこまでしなくても、必要な情報は得られるしね。
「シルくん、私はお給金とかはいらないよ。シルくんには返せないくらい恩もあるし、何よりシルくんのためなら私何でもするから」
「姉さん、そのキャラ似合ってな――ぐぇ」
見事な手さばきで視覚外から石を飛ばした茜と命中して悶絶する才蔵。
見てて面白い姉弟だなぁ。
「ありがとう。でも茜にしたことは俺のただのお節介だから気にしなくていいよ。それに頑張った分だけ望む報酬も渡させて欲しい」
仕事の対価はキチンとしないとね。
「……望む報酬ってことは、お金以外も頑張ったら望んでもいいの?」
「まあ、俺に用意出来るものなら」
「シルくんに望むことでも?」
「俺に出来ることなら何でも」
「……そっか。うん、ならそっちの線でも頑張ろうかな」
何やら頷く茜。
「……姉さん、もしかして本気でシリウス様に?」
そんな茜を見て、才蔵は小さく呟くと俺に同情気味に視線を向けてくる。
「あの、姉のことはどうか良くしてやってください」
まあ、元々邪険にする気はないけど……そんな懇願するような顔はやめてほしい。
「じゃあ、才蔵も茜もとりあえず了承してくれたってことでいいんだね」
「ええ。勿論です。それに、ひょっとしたら運命の女性に会えるかもしれませんし」
「運命の女性?」
何やら気になるワードを出してきた才蔵。
「えっと。実は昔、流れの占い師?と名乗る方に言われまして。僕には赤い糸に繋がった運命の女性が居るらしいんです」
その人は異国の人で、才蔵は異国の地でその人と出会い、惹かれ合い結ばれると言われたらしい。
「父が失脚して、嫌な仕事を継がなくて良くなったので絶対安全な仕事を見つけてその人を迎えたいんです!」
さっきまでとは違って、心底やる気満々な様子の才蔵。
忍者のような裏の仕事ではなく、普通に安全な仕事でお金を稼いでその人を養っていきたいと才蔵は実に楽しそうに話す。
その運命の人に夢に夢見てる感じはするけど、その楽しげな様子はどことなく茜と似てて見てて悪い気はしない。
そんな風に才蔵の事を知った頃だった。
虎太朗側の決着がついたのは。
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