第461話 驚きの光景
「主よ。遅くなりました」
茜に加護を渡して、互いを知るためにのんびりと話していると、先に片がついたのはルツの方だった。
多少疲れてはいるが、ほとんど無傷なようで縄でぐるぐる巻きにした対戦相手の茜の弟くんを連れてこちらにやって来る。
「お疲れ様、ルツ。意外と時間かかったね」
「すみません。想定以上の強者に手こずりました。まだまだ修行不足ですね」
ルツ相手に善戦した弟くんはかなり疲れきってぐったりしてるけど、縄抜けをしてまで立ち向かう気はないのか大人しくしている。
「修行不足ついでに、今後はこっちの茜が俺の領地に来てくれることになったから忍者についても学ぶといいよ」
「よろしく〜」
実に楽しそうに俺に寄り添いつつそうルツに挨拶する茜。
ルツはその様子を見て察したような顔をしたが、余計なことは言うつもりはないのか静かに頭を下げた。
流石デキル男だ。
ただ、その茜の様子にぐるぐる巻きにされていた弟くんはかなりびっくりしたような表情を浮かべていた。
「え?そこの人、本当に姉さん?虎太朗さんですら隣に座ったら蹴飛ばすようなあの姉さんがそんな穏やかな顔して男の人の隣にいるなんて……貴方様は一体……」
「才、後でお姉ちゃんとお話しようか」
何ともアットホームな姉弟だ。
「ルツ、とりあえず彼の縄は解いてあげていいよ」
「承知しました」
「最も、残ってる力で縄抜けくらいは出来るだろうけどね」
「……見抜かれてましたか」
ふぅと一息つくと、見事に縄を抜け出す弟くん。
ただ、本当に残ってる力を絞ったようで直後にヘロヘロになっていたので、軽く回復魔法をかけてから、ルツと弟くんそれぞれに飲み物を渡す。
「ありがとうございます。主よ」
「あ、どうも。えっと……姉から僕達の事は聞いてますか?」
こちらの事はある程度見当がついてる上で、そう尋ねてくる弟くん。
ある程度は察してそうだし中々賢そうだ。
なので、端的に答える。
「うん。その上で茜達を俺の領地に迎えたいんだ。とりあえず君の名前聞いてもいいかな?」
「あ、すみません。僕は才蔵と申します」
「俺はシリウス。そっちの君を打ち負かしたのがルツだよ」
「改めてまして。ルツと申します。先程は手荒くなってしまいすみませんでした」
「あー、いえいえ。こちらとしても本意でなく挑んだのでそこはお気にならさず」
巻き込まれたを強調してそうな弟くんの才蔵。
案外良い性格をしてるのかも。
「えっと。シリウス様ですね。ご高名はかねがね。虎太朗さんだけでなく姉もどうやらご迷惑をかけてそうな感じのようで本当にすみません……」
「虎太朗には俺の方が助けられてばかりだよ。茜の方も話してて楽しいしこれからも傍に居て欲しいと思ってるよ」
「シルくん……えへへ」
スリスリと体を押し付けてくる茜。
そんな茜の様子……というか、それプラス俺の言葉と俺たちの様子にかなりびっくりした顔をした才蔵だったが、驚きつつも姉の変化に一瞬顔を綻ばせたのを確かに見た。
うん、やっぱり茜の弟だな。
仲良くなれそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます