第459話 くノ一の答え

「加護紋?シルくんの?」


当然の疑問符を浮かべる茜に、俺は簡単に加護紋について説明する。


俺と繋がりを作ることで、俺の加護を与えることが出来ること。


その力によって無理なく子供を宿せるようになること。


そして、その代わりの懸念事項。


「俺の加護を持ってるのは俺の婚約者だけ。だからこそ、これを持つと俺の婚約者扱いされるかもしれないし、俺と繋がりが出来るから嫌でも距離が近くなる」


加護による繋がりは強い。


だからこそ、この方法は他の方法とは違った側面の危険性もある。


「だから、この方法は茜に良い相手が居るなら使えないし、今後その可能性を潰しかねないんだ」

「そっか。じゃあ、三つめの方法でいいよ」


……即答された。


「あ、勿論、シルくんが嫌じゃなければだけど」

「俺は大丈夫だけど……その、茜はいいの?好きでもない男と心の距離が近くなるんだよ?しかも婚約者扱いされるかも」

「気にしないよ。シルくんなら大丈夫。それに、私モテるけどそういう相手居なかったからむしろ楽しそう」


そう笑ってから、茜はポツリと呟いた。


「まあ、でも……何よりも諦めてた選択肢が出てくるならどんな方法でも飛びつくかな 」


それは、本当に心から出てきたという感じの言葉。


それだけ、茜は子供が欲しいということなのだろう。


そしてその気持ちが強く、諦めていたからこそ希望があるかもしれないと考えるだけで嬉しいという感じの様子。


俺の言葉を信じてくれてるのだろう。


「それでどうすればいいのかな?私から何かする事あるの?」

「いや。必要なら今すぐにでも出来るは出来るけど……本当に三つの方法でいいの?」


確かに万が一というか茜自身へのもしもの時のリスクは加護紋が一番安全ではあるが、加護紋によって茜を俺に縛ってしまう恐れもある。


だからこその確認だけど、茜は気にした様子もなく答えた。


「まだ出会ったばかりだけど、シルくんが凄い人なのはよく分かった。それ以上にとっても優しくて私好みってこともね。シルくんにとって私に価値があるかは分からないけど、少なくとも仕えるならシルくんしか居ないって思うんだ 」


「あのタロくんが懐いてるのも何となく分かるからね」と微笑む茜。


うーん、まあ正直茜の事は悪く思ってないし多分、加護紋も渡せるとは思うんだが……やっぱり容易に決めていいことでもないので少し躊躇してしまう。


「シルくんは優しいね」

「そう?」

「うん。私のことばかり気にしてるけど、その選択肢ってシルくんが私を信じてくれてないと話してないでしょ?」

「まあね」


出会っばかりだが、茜はかなり信じられる人間なのは間違いないと思うし、くノ一としての力も確かだ。


打算ぬきでも領地に来てくれると助かるたいえば助かる。


「婚約者にしてとまで言わないからさ、傍に置くくらいの気持ちでシルくんは居てよ。そのうちシルくんの子供を私が宿したら私の勝ちってことで」


そう冗談めかして笑う茜に、俺は念の為最後の確認をした。


「後悔するかもよ?」

「しないよ。シルくんとなら」

「その根拠は?」


そう聞くと、茜は自信満々に答えた。


「女の勘」

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