第458話 方法と信頼
「……えっと、聞き間違いかな。くノ一でも子供を宿す方法があるって聞こえたんだけど」
「あるよ。いくつか」
「え?選べるくらい選択肢まであるの?」
「まあね。胡散臭く感じるでしょ?」
「うーん。でもシルくんの言葉だとあながち間違いでもなさそうって感じ……かな」
俺の言葉に先程までの寂しそうな表情から一変して、何かあるならと視線を向けてくる茜。
「その前に、茜が受けたくノ一になる手術についてなんだけど。ざっくりと内容を聞いていい?」
「えっと、分かった」
茜もある程度はその手術の内容を把握してるようで、ざっくりとした話を聞くだけで俺としても理解出来た。
「うん、やっぱり」
「今ので何かわかったの?」
「まあね。まず一つ。その秘伝の技術だけど恐らく漏れがあると思うんだ」
「漏れ?」
「手順と必要なものがいくつか抜けてる可能性が高い。だからこそ、本来の技術より劣る分欠陥があるんだと思う。そうでなければくノ一が子供が出来ないなんて事態にはならないから」
秘伝の技術といえど、時の力には勝てないのもまた事実。
特に時代によって手に入らないものを代替のものやそれ抜きの手順で進めたということも時代によって無くはない話だ。
「まあ、そっちの方は後で正しい手順を書いておくよ。必要なものも今の時代なら手に入ると思うし」
そっちはいいとして、茜の方だ。
「まず、今の茜の状態から子供を普通に宿せるようにするには大きく三つの方法がある」
「三つもあるの?」
期待するような表情の茜に頷き答える。
「まず一つ目。俺の手による手術による方法。この方法だとくノ一の力……まあ、忍術をこれまで通り使えるようにも、逆に無くすこともできる」
この方法の不安な点は俺が久しぶりに手術をするという点と、どうしても茜の素肌を見てしまうという点がある。
前者はまあ、なんとかなるが後者は茜にとってはあまり喜ばしくないだろう。
くノ一といっても、好きでもない相手に素肌を不用意に見せるものでもないしね。
「シルくんなら別にいいよ。むしろその程度でいいならどんどん見てよ」
俺の心配を他所にどこか楽しげに笑う茜。
少しは元気になってきたようで良かった。
「二つ目は、魔法による方法。ちょっと力技かな」
魔法によって茜の力の流れを強引に変えて、問題ないようにする方法がこれだ。
ちょっと荒っぽいが、茜に負担はあまりないし俺が少し大変なくらいなのでやれなくもない方法。
「魔法って凄いね。そんな事まで出来るんだ」
理論上はそれなりに魔法を極めていれば出来なくないのだが、今のところ周りでは俺くらいしか出来ないので、そこは一応注意しておく。
「最後の一つは?」
その言葉になんと答えるべきか迷ってから、正直に答えることにした。
「……これは少し特殊な方法でね。茜の今後に影響が出てしまう恐れもあるんだ。だからこそ前の二つで納得できるならそっちの方がいいとは思うんだけど……」
「うんうん。それでどんな方法?」
茜は俄然興味が出たと言わんばかりに顔を寄せてる。
その興味津々でありつつも期待するような目に逆らえず、俺は軽く周囲に防音の結界を貼ってからその方法を茜に言った。
「俺の加護紋を与えてそれによって解決する方法。それが三つめ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます