第454話 茜達の目的
まず、腕試しは茜の案らしい。
「親父もノリノリでタロくんに向かっていったけど、私もシルくんに凄く興味津々で挑んじゃった。ごめんね」
一応弟は止めに入ったらしいが、茜とその父親のテンションに着いていける境地には至ってないらしい。
ルツに挑んだ時に彼が涙目だった理由がよく分かったよ。
「んで、シルって俺の事?」
「うん、シリウスくんだから、シルくん。どう?」
「いいんじゃない。好きに呼んでよ」
「じゃあ、シルくんね。私のことも茜って呼んでよ。可愛い愛称とかあればそれでもいいよ」
「考えておくよ」
俺の立場について、茜の方も軽くは把握してるようだが、俺があまり固い形式に拘ってないということも分かってるようですぐに順応してそんな事を言い出すのだから凄い。
「でね。親父が仕事をクビになって暇になったし、昔出ていったタロくんを追いかけるって言うから、こうして会いに来たんだ。タロくんのことについては知ってる?」
「事情はあまり聞いてないね。話したくなさそうだし、愛する奥さんや子供たちにもちゃんとは話してないみたいだね」
虎太朗はあくまで過去は過去で、今はただの虎太朗としてこれから先家族と幸せになりたいのだろうし、俺もその気持ちを尊重してるからね。
何かあっても何とかするし、虎太朗なら自力でも問題ないだろう。
「え?タロくん結婚したの!?しかも子供までいるんだ!!」
「詳しく聞きたい?」
「聞く聞く!」
目を爛々とさせる茜に俺は虎太朗が領地に来てからのことを軽く話す。
領地に来た初日に女手一つで娘さんを育てる奥さんに一目惚れして上手いこと母娘を口説いてゴールイン。
息子まで生まれたと。
夫婦円満、血の繋がりはないが娘のことを凄く愛しており、生まれた息子にも惜しみなく愛を注いでる。
……なんか言葉にすればするほどコミュ力の塊だよな。
来たばかりの場所で一目惚れして、母娘そろって口説き落として今では幸せに一家に。
立ち回りも上手いし、頼りにもなるし本当に大した男だ。
こういう時にしみじみ思う。
人との縁というのは本当に大切なものなんだなぁって。
「タロくんが結婚かぁ。してるかなぁとは思ってたけどまさか子持ちにまでなってるとは思わなかったよ」
驚きつつも、虎太朗らしいと思ったのか納得気味に頷く茜。
「茜は虎太朗とは親しいの?」
「結構仲良しだったとは思うよ。少し年の離れた幼なじみみたいな?でも、私よりも親父のほうが付き合いは深いかな」
虎太朗に戦いの基礎を教えた一人が茜の親父さんらしい。
それだけではない熱量があの二人にはあるが……まあ、楽しそうだしスルーだな。
ちなみにルツの方もまだ終わってないようだが、こちらを気にする余裕がある分ルツの方が場馴れはしてるようだ。
油断はしないように。
その油断をつくのが上手い忍者も多いからね。
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