第452話 父親と弟らしい

「あはは!いいね!こんなのめったに出来ないから凄く楽しい!」


心から楽しそうに術比べをするくノ一の女の子。


「こういうのは俺も久しくなかったから悪くないよ」


俺は俺で、別に戦闘マニアではないが久しぶりに技を競えてる感覚は嫌いではない。


「相思相愛だ!」

「そうかもね」


術を術で返す度により高度でより難易度の高い術が飛んでくるので、俺もなんとか思い出を掘り起こして返してるけど、その分術の規模もかなり大きくなってきてる。


念の為にここに来た時に結界を張っておいて正解だったな。


向こも途中でその事に気づいたのか、その分遠慮という文字が完全に吹き飛んでる様子だけど、そういう配慮が本来は出来るようなので話せない相手でもなさそうなのはプラスかな?


「体術も出来るなんて本当に凄いね!体の割に凄く力も強いし流石男の子だね!」

「君もかなりの使い手だね」

「親父ほどじゃないけどね!タロくんと今はイチャイチャしてるのかな?」

「そうみたいだね」


なるほど、虎太朗に挑んだ大柄の男はこの子の父親か。


そうなると。


「さしずめ、あっちは弟かな?」

「正解だよ!」


ふむ、忍者三名は家族で父親、長女、長男というところか。


父親の方はかなりの体術の使い手だけど、忍術の方も出来る様子。


最も忍術はこの子の方が遥かに使い手のようだけど、その分体術の方はまだまだ親父さんとは開きがあるようだ。


十分すぎるほどに強いけど。


「じゃあ、とっておきやるね!」


そう言うとその子はまたしてもこちらに一瞬気づかせないほど見事に姿を消してみせる。


捕捉までの時間稼ぎに、これまでの戦闘で密かに仕掛けていた妨害用の仕掛けを使って見せた辺り、かなり頭も回るらしい。


忍具は特殊なものが多くて、取り扱いや起動が面倒なものも多いんだけど……これだけの数を巧みに利用するのは大したものだ。


だがまだ甘い。


俺は俺でそれらを全て潰して、いつでも迎撃できるように足を止める。


「きなよ」


かなり露骨な誘いだが、向こうがその言葉に一瞬笑みを浮かべたように思えた。


その瞬間だった。


「『忍法・瞬足斬の術』!」


雷でも落ちるようなスピードでその少女のとっておきは放たれた。


光よりも速いその一撃は必中にして必殺の一撃。


先程までの術に比べれば派手さはないが、その分シンプルに速く、強い一撃。


雷のような速度と触れたものを必ず殺す威力のあるそれは避けるどころか、見切ることも本来は不可能だが生憎と俺は例外。


見事な気配の殺し方もこの技を際立たせるためでもあったのだろうと少し愉快な気持ちになりつつ、その一撃を真っ向から受けるのだった。

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