第451話 忍術
低く構えたと思ったら、その子は一瞬で姿を隠した。
身のこなしも凄いが、何よりもこの気配の経ち方が常人のそれを逸脱している。
俺でさえ、一瞬分からなくなりそうになった程だ。
その隙をつくように一瞬の事だった。
四方を囲むようにクナイや手裏剣が俺目掛けて飛んできたのは。
「よっと」
全部避けるのは大変だし、手近を通ったクナイを掴むとそれでその他を全部弾く。
クナイや手裏剣の先には薬が塗られてるけど、毒でないのは一応気を使ってくれてるということだろう。
殺す気はなく、本当にただ力を試したいということか。
「そこ」
木の影に隠れていたその子目掛けてクナイを投げる。
結構な速さのクナイだったが、あの女の子なら簡単に避けられる速度だろうと思っていると、その子は避けることなくクナイをモロにくらった。
そして、数秒後――ボンッと女の子が木の丸太へと姿を変えた。
いや、これは変わり身の術か。
「もらった!」
その瞬間を逃すことなく、女の子は俺の背後を取ると首筋にクナイを突き刺す。
避けれると思ったのか、遠慮のない速度のクナイが俺の首も元に刺さると、女の子は一瞬驚いたような顔をしてからすぐに分かったのか驚きに顔を変えた。
「まさか――変わり身!?」
ぼふんっと先程のお返しとばかりに俺も変わり身返しをしてみたのだ。
「なら、これはどう」
女の子が印を組むと近くの木の木の葉が全てこちらに女の子の思うように飛んでくる。
しかも、鋭利な刃物のような鋭さを伴って。
殺意マックスだが、これでも問題ないと思われたのだろうなぁと考えつつ、俺は俺で古い記憶からいくつかの印を結んで術を発動した。
瞬間――地面から火柱が上がり、木の葉を全て焼き尽くした。
どうやら上手く発動できたらしい。
「凄い!その術知ってるなんて君も忍なの?」
「いんや。ただの王子様だよ」
「……あはは!面白い!」
冗談だと思われたのか、はたまたそれが事実だろうとどっちでも良いと思ったのか。
何にしても楽しそうなその子はあれこれと術を変えてこちらを試してくる。
いや……楽しんでるというべきか。
術比べを。
俺も久しく使ってなかった忍術というカテゴリーを思い出しながらの戦いだったけど、そこそこ相手が出来てる辺り、覚えてるものだな。
忍術は前世でとある忍者に教わったきりだったけど、魔法をメインにして戦うとどうにも使うのが難しいので覚えたきりだったんだよなぁ。
使えないわけではないし、上手く組み合わせる方法も沢山あるにはあるんだけど、仙術が便利すぎてそちらを体術と一緒にサブで使ってるとどうにもね。
「まだまだいくよ!」
楽しそうなその子の様子から、こうした趣向が出来る機会が少ないのが伺えてどうにも付き合ってしまう。
まあ、俺も久しぶりに覚えてる術を試せて楽しいけど。
途中から、虎太朗やルツのことを忘れて二人の時間を楽しんでしまったが……まあ、あの二人なら大丈夫だろう。
強いしね。
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