第448話 兄様のご褒美
「ありがとう、シリウス。助かったよ」
「いえ、お役に立てたなら良かったです」
トルマッテ子爵と奥さんが帰ってから、そうしてことの成り行きを見守ってくれてたレグルス兄様からそう言われるが、俺としては出来ることしかしてないのでもう少し役に立ちたい所存。
そんな俺の気持ちを分かってるのか、レグルス兄様はくすりと微笑んで言った。
「トルマッテ子爵は優秀な人物で信頼もできる。息子さんも将来はきっと父親の跡を継いでくれるだろうし、未然に問題が解決できたのは本当に良かったよ。あとは何事もなく若い目が育ってくれたらこの上ないけど」
「大丈夫だと思いますよ。トルマッテ子爵も奥さんも息子さんのことを心から大切に思ってましたから」
少なくとも前世で何度も見たような悲惨な結果にはならないだろう。
「そうあって欲しいね。それにしても毎度のことシリウスは博識で助かるよ。僕らも分からない、シリウスでもお手上げってなると手がなかったしね」
「俺にも分からないことはありますよ」
「そうだろうね。家族への甘え方が下手な所はあんまり変わってないし」
そうかな?
まあ、頼るのは下手かもしれない。
それを望める環境ではなかったし、望んでいい立ち位置でもなかったしね。
「ねぇ、シリウス。トルマッテ子爵にあそこまでしてあげたのって、フローラを無意識に重ねたからでもあるでしょ?」
「かもしれませんね」
特異体質と聞くと、『疫集めの呪い』を持つ俺の婚約者のフローラの事を考えてしまっていたのは否定できない。
フローラはそれでかなり辛い思いをしてきただろうし、加護で繋がってからフローラの気持ちもさらに分かるようになった。
だからこそ、少しお節介をし過ぎたのかもしれない。
「甘いでしょうか?」
「シリウスらしくていいじゃない。でも、無理して自分が倒れるのはなしだよ」
「そうはなりたくないですね」
何度も繰り返したくはないものだ。
「んー、でもシリウスはそういう自己管理苦手というか限界ギリギリで計算してそうだしね」
……それは確かに否定できないかも。
「まあ、フィリア嬢達が居れば心配いらないか。新しい奥さんも増えてるようだし」
「皆、俺よりもしっかりしてますから」
「ウチの娘もそのうち支える側になるから、今は支えてあげてね」
「言われずとも。可愛い姪ですから」
「頼もしいね。シリウスになら安心して任せられるよ」
そんな話をした後のこと。
レグルス兄様は今回の件のお礼と言って、前々から俺が探していたとある苗木をくれた。
あまり俺は欲しいものを口にしないようにしてるんだけど……前にポロッと口から出た言葉を覚えてたのか。
流石レグルス兄様だ。
別にお礼が欲しくて頑張ったわけじゃないけど、こういうスマートな気遣いを俺も出来るようになりたいものだ。
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