第447話 液化変化

「息子さんは『液化変化』という特異体質ですね」


まず、そうハッキリとさせておく。


「最初に言っておきますが、この特異体質は遠い先祖の体質の先祖返りに近いものなので、お二人に非はありません。正しく把握してればコントロール出来るようになれますし、息子さんに害もないでしょう」


その言葉に少し安堵した様子のトルマッテ子爵だが、奥さんはまだ少し不安そうだった。


初の我が子がこんな事になればそうなっても仕方ないな。


「『液化変化』は見た通り、自身を液化させてしまうことがある体質です。生まれてからしばらくのうちは今みたいに触れると軽く変化させてしまう程度ですが、大きくなるにつれて液化の規模も大きくなります」


大体、3歳前後まではこの状態だけどそこから先は体の成長に応じるように徐々に液化する範囲が広がっていき、最終的には自身を完全に液化させてしまうこともある。


「息子は大丈夫なのでしょうか?」

「今の状態だと息子さん本人には害はありません。液化した部分もすぐに元に戻りますし、その影響で中に何か入り込むこともありませんから」


ただ、大きくなるとそうもいかなくなる。


「トルマッテ子爵、後で『液化変化』の特異体質の詳しい資料をお渡しします。もしもの時の対処法と息子さんの成長に応じたマニュアルなんかも作っておきますね」

「お心遣い、感謝致します」

「それと、念の為、補助の魔道具を作りますので、そちらも後日お渡しします。その後は何か問題があれば必ずこちらに連絡を。レグルス兄様に会いに来る時にでも定期的に見られれば尚問題ないかと」

「それは助かりますが……そんな事までよろしいのでしょうか?」


この特異体質を知ってるだけでなく、更に詳しい事とその後のケアまで話したので少し困惑気味なトルマッテ子爵。


裏でもあると思われたか?


まあ、美味い話ほど怪しいものはないしね。


「特異体質というのは周りの理解と協力があっても大変なものです。トルマッテ子爵や奥様には息子さんのことを何がなんでも守るという気持ちを感じました。だからこそ協力したいと思っただけです」


同じ体質の子供が前世で、気味の悪い子供と切り捨てられた境遇を何度も見てきた。


だからこそ、理解のある親というのは本当に大切なのだ。


「それに、息子さんは将来この国を支える一人になるかもしれませんしね」


そう言うと、驚いたような顔を一瞬してから、トルマッテ子爵と奥さんは深く頭を下げた。


「何から何まで本当にありがとうございます。このお礼は必ず」

「お気になさらず」


俺としては普通の対応をしただけではあるが、息子さんを心から大切に思っているからか、かなり恩を感じてくれてそうなトルマッテ子爵と奥さん。


俺は気にしないから、強いていえばレグルス兄様やラウル兄様の国作りへの協力を尚一層頑張ってくれると助かるとだけ軽く言っておくが、その言葉にレグルス兄様は苦笑していた。


そんな変なこと言っただろうか?


何にしても、元気に育つといいけど。

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