第446話 特異体質

レグルス兄様からお呼び出しを受けた。


何か悪いことをした覚えはないが、何か迷惑が降り掛かってないとも言いきれないので迅速に動く。


まあ、そもそも尊敬する兄様からのお呼び出しを断るという選択肢がないんだけどね。


ワンチャン、ティファニー関係かと思って城へと飛んで、部屋に入るとレグルス兄様の他に3人の来客がいた。


一人は確か……そうだ、トルマッテ子爵だったか。


レグルス兄様の派閥の人だったので覚えていた。


文系肌の人間で、かなり使えるとレグルス兄様からは評価されてたはず。


となると、赤ちゃんを抱っこしてる人はトルマッテ子爵の奥さんかな?


寄り添うようにトルマッテ子爵の隣に並んでるし、以前にトルマッテ子爵からちらりと聞いていた特徴と近い気がする。


赤ちゃんはトルマッテ子爵の子供だろうけど……ん?


これってもしかして……


「レグルス兄様、遅くなりました」

「いやいや。いつも早くて助かるよ」

「兄様のお呼び出しですから、お待たせするのも申し訳ないですし」

「シリウスは本当に優しいね。さて、要件はこちらのトルマッテ子爵のことなんだけど、トルマッテ子爵とは面識があったね」

「ええ」


トルマッテ子爵に視線を向けると、貴公子のような微笑みで挨拶をされる。


「お久しぶりでございます、シリウス殿下。トルマッテ子爵家当主のエベルト・トルマッテでございます。隣は妻のナゼルと先日生まれた息子のエルガです」

「お久しぶりです。トルマッテ子爵」


イケメンは何をしても様になるものだ。


そんなことを思っていると、奥さんも続くように息子さんを抱いたまま頭を下げて挨拶をされる。


「実は、殿下に一つ意見を頂きたいとこがありまして、こうしてレグルス様に取り次いで頂いた次第です」

「息子さんのことですか?」

「……その言い方からして、もしや殿下は息子のことをお聞き呼びだったのでしょうか?」

「いえ。特には」


レグルス兄様からは何も聞いてないが、部屋の状況と目の前にいるトルマッテ子爵の息子さんを見れば何を話したいのかはすぐに分かった。


「僕の知識にはない状態だったけど、やっぱりシリウスは知ってるみたいだね。相変わらず博識だ」

「偶然ですけどね」


そう言いながら、許可をとってトルマッテ子爵の息子さんにそっと触れる。


すると、触れた箇所が僅かだが液化してしまう。


それはほんの数秒のことだが、その様子にトルマッテ子爵とトルマッテ子爵の奥さんは悲痛な顔をする。


「妻が抱いてる時は問題ないのですが、私や他の使用人が触れようとするとこうなってしまうのです。今のところは大きな問題にはなってないのですが……」


それでも、我が子の不可思議な状態が不安ということだろう。


良い親だ。


貴族的な心持ちだけでなく、普通に親心としての心配もある。


こういう人達なら話しても大丈夫だろう。


この特異体質について。

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