第445話 加護交換

フロストから加護紋が欲しいと言われた。


……何を言ってるのか自分でも分からないが、事実なので仕方ない。


「コントロールの練習にも良いでしょ?試しにやって欲しいな」

「俺は別にいいけど……フロストは本当にいいの?その、繋がりが出来るってことは」

「うん、色々分かっちゃうんだよね。私は人に渡したことないから経験ないけど」


龍族にも人に与える加護のようなものがある。


力のある種族かつ、神域に近いほどそれを成しやすいらしい。


「じゃあさ、交換でどう?私の初めてあげるから、その交換ってことで」

「……わざと言ってない?」

「セシル達の真似。でも、せっかくならシリウスがいいんだ」


まあ、フロストが良いなら俺に文句はないけど……


「これでまた、新しい嫁って認識強まりそう」

「私は嬉しいからいいけどね〜。じゃあ、私から渡すね」

「分かった。有難く受け取るよ」

「よし、じゃあいくね」


そう言うと、フロストは意識を集中させてゆっくりと俺の手に手を重ねてくる。


数分ほどゆっくりと馴染むようにフロストの加護が俺の中に流れて、繋がりができる。


凄いな、ドラゴンの加護は前世で経験あるけどそのどれとも比べ物にならない力を感じる。


それだけフロストの力が大きいのだろうが……下手したら父親の龍王越えてないこれ?


気のせいだろう、気のせいにしておこう。


「……よし、大丈夫みたいだね。じゃあ、次はシリウスの番」

「本当にいいんだね?」

「どんとこい」


そう言われたのなら遠慮しないで試すとしよう。


そう思って、今度は俺がフロストの手を包み込むとそのままイメージを強くして力を流し込む。


フロストは龍族で力のあるドラゴンだ。


普通にやるとかなり時間がかかるが、フロスト自身が心を許してくれてるからか、はたまたフロストの加護の感覚があるからか、何にしても順調にフロストへ加護が馴染んでいく。


「うわぁ……これは、こそばゆいなぁ」


そう言いつつもどこか嬉しそうなフロスト。


先程のフロストよりも少し早く、加護の受け渡しと繋がりを確認できた。


「……うん、よし。これで出来たかな」

「あ、これが加護紋だね。確かにこれは良いね」

「……喜んでもらえて嬉しいけど、人目は気にしようよ」


いきなりお腹見せるからびっくりしたよ。


「シリウスならどこ見られても大丈夫だけど?」


からかうようにか、はたまた素なのか。


何にしてもその言葉が本心なのが繋がりで分かってしまう。


しかも、互いの加護を交換したので更に繋がりが強化されて凄いことに。


先に前世の記憶に辿り着くのはフィリアが先か、フロストが先か。


出来れば見ない方が良い気もするけど、見られたら仕方ないという感じの対策はしておくか。


そんな訳で、俺の加護を持つ者がまた増えてしまったが、フロストなら悪用しないだろうし、本人が非常に嬉しそうなので大丈夫かな?


しかし、加護の交換って中々聞かないワードだよね。


俺だけかな?

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