第443話 鱗の価値

「はい。いっぱいあるから好きに使っていいよー」


まずは一番身近なドラゴンから。


そんな気持ちで屋敷に戻ってからフロストに相談すると特に考える様子もなく亜空間から沢山渡される。


「えっと。良いの?」

「うん。私も何となく持ってるだけだし。人間にとってはかなり価値があるんだろうけど、ドラゴンなら簡単に手に入るからね」


「むしろ余り過ぎてて貰ってくれると嬉しい」と部屋いっぱいに渡されるけど……こんなには使わないだろうなぁ。


でも、助かるには助かる。


「ありがとう、フロスト」

「でも私の鱗を使った武器か……なんだか婚約指輪みたいだね」


その発想はなかったなぁ。


「逆プロポーズされたってことか」

「嫌だった?」

「光栄です。プリンセス」

「うむ、くるしゅうない……なんてね」


楽しそうに笑うフロスト。


本気なのか冗談なのか分からないような言い方をする時があるけど、屋敷に住むようになってフロストのことも大分分かってきたのでその判別も出来るようにはなってきた。


照れ隠しはたまにあるけど、フロストから向かってくる言葉は本心が含まれてる事の方が多いみたいだ。


その気持ちにあとは俺が答えられるかどうか。


それは獣人族のクーデリンにも言えることか。


クーデリンも多少の照れはありながらも俺への気持ちを比較的ストレートに伝えてきている。


婚約者達もほぼそういう感じで二人を受け入れてるし……そのうちきちんと言葉にして伝えて、形として残すとしよう。


「鱗のお礼がしたいんだけど何が良い?」

「うーん。そうだなぁ」


考えるような素振りをみせてはいるけど、フロストは前々から考えていたのかすぐに答えを出した。


「じゃあ、チューでいいよ」

「……チュー?」


それってキスのこと?


「唇がダメなら頬とかでもOK」


……もう少し恥じらいがあっても良いのでは?


そう思いつつ、バッチコイと待ってるフロストの額にそっと口付けをする。


「……これで満足して頂けそうかな?」

「大満足。思ってた以上に悪くないね」


楽しげに笑うフロスト。


ちょっとだけ頬を赤らめてるのがずるい気もする。


「持ってる鱗、全部渡したいくらいだよ」

「十分すぎるくらいに貰ってるよ」

「今後もどうせもっと増えるから気にしても仕方ないよー」


その意味が分からないほど鈍くもないけど、フロストの鱗は真っ白で綺麗なので使わない分があっても困ることはないだろう。


実際、ルツの槍を取りに行った時に必要数をゾルニに尋ねたけど一枚の鱗の半分で大丈夫だと言われたし、残りは観賞用となりそうだ。


まあ、見てると綺麗で好きだから良いんだけどね。

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