第442話 ドワーフはブレない

時間が出来たので、その日はドワーフの国へと来ていた。


いつものキャンディへ会いに来るついでに、ルツの槍を直す目的もあった。


ルツは国を出る時のあれこれでかなり槍がボロボロになっていた。


かなり良い槍だし、ルツの気持ちを考えると新しいものを作るよりもこれを直して使った方が良いだろうと思ったのだ。


本人の許可も貰って槍は預かってきたが、さて誰に直して貰うか。


キャンディに任せるのがベターだろうけど、俺以外に武器を作るのを父親でありドワーフの長のゾルニがまだ許可してないと考えると少し悩む。


武器の修理くらいなら大丈夫だろうか?


「キャンディ、来たよ」

「あ、シリウスくん。丁度良かった」


最近あまり視線が合わなかったキャンディだったのだが、本日は何か相談があるようで比較的落ち着いていた。


「何かあったの?」

「実はね。親父が龍族の鱗で武器を作りたいとか言い出したんだよね」

「それはそれは」


竜ならともかく、龍か。


普通に考えればかなり無茶な話だけど。


「何か、古い文献を漁って出てきた中にシリウスくんに良さそうなものがあって、それに必要なんだって」


うーん、俺のために作ってくれるのか。


「分かった。ちょっと相談してみる」

「え?相談?」

「龍族と知り合いになってね。余ってる鱗ないか聞いてみるよ」

「……いつもながらシリウスくんて凄いよね。そんな簡単に龍族と知り合いにはなれないでしょ」


知り合いどころか、屋敷に住んでて領民から嫁扱いされてます。


……なんて言えばさらに変な顔されそうだしそこはまあ、スルーでいいか。


「こっちも相談なんだけどさ」

「相談?珍しいね。なになに?」

「これなんだけど」


空間魔法の亜空間から槍を取り出して、キャンディに見せる。


それを見てキャンディはかなり感心したような表情を浮かべた。


「凄い大切に使われてる。しかもかなりの使い手。シリウスくんのじゃないでしょ?」

「最近面白い騎士を一人拾ってね。その騎士のだよ。修理を頼みたいんだけど……」

「うーん。やってみたいけど、これは親父向けかな」


少し悩んでからそう答えるキャンディ。


「今やってくれそう?」

「さっきの話何とかなるかもって、シリウスくんが話せば多分。でも、何れは自分でも出来るようになるから期待しててよ」

「じゃあ、その時を楽しみにしてるよ」


その話の後にゾルニの元に行って鱗の件と修理の件を話してみる。


「ほう。この槍良い面構えだ。気に入った。明後日までにはもっと良くしておく」


思った以上にルツの槍を見て機嫌を良くしたゾルニから色良い返事が貰えたのでこれで大丈夫だろう。


あとは龍族の鱗か。


聞くだけ聞いてみるか。

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