第441話 騎士としての選択
「主よ。少々お時間を頂いてもよろしいだろうか?」
虎太郎とルツとの釣りから数日後。
ルツの魅了の呪いの解析が終わった頃に、タイミングよくそう声をかけてくるルツ。
「ルツか。丁度良かった。さっき呪いの解析が終わったからこれでいつでも呪いを解けるよ」
「その事ですが、お聞きしたいことが」
「なに?」
「先日、主はこの呪いをコントロールすると仰ってましたがその詳細をお聞きしたいのです」
ふむ、なるほど。
「コントロールというのは、この力を意図的に使えるように……という意味でしょうか?」
「それもあるけど、呪いを媒介に悪魔から力を引き出すってことかな」
「力を引き出す?」
「どうにもルツに呪いを与えた悪魔はルツにご執心なようでね。俺の予想だけど呪いを解くとまた呪いを与えに来ると思うんだ」
ルツの呪いの具合から、それくらい執着を持ってるように感じられる。
「向こうとしてはルツとの繋がりを何がなんでも解かせないっていう意志みたいなのがありそうなんだよね」
「そんな事まで分かるとは……」
「長いこと関わってるとね」
悪魔の考えることはある程度把握してるけど、ルツの場合は恐らく、玩具に入れ込むタイプのように感じる。
逆に言えば、自分の手元にある事さえ承知させれば利用しても向こうは気にしない。
そんな事があるのかといえば、そこも悪魔のおかしな所なんだけど執着がある分気にしない面も大きいのだろう。
「ルツが俺の騎士になってすぐにある魔道具に触れさせたことがあったよね?」
「テストと仰ってましたね」
「あれね、悪魔の呪いを通して力の行き来を試してもみたんだよね」
その結果からして、俺の予想は恐らく外れてない。
「呪いを通して、ルツが意図的に力を使えるようになれば今以上に強くなれることは間違いないと思うよ。ただ、コントロールの修練はかなり大変だし俺はあんまりオススメしないけどね」
「……その場合、主から指導を受けるのでしょうか?」
「まあ、その方が早いかもね」
「では、お手数ですがお付き合い願えませんでしょうか?」
おっと、そう来るか。
「理由は聞いても問題ない?」
「無論です。最大の理由は悔しいからです」
「悔しい?」
「このままこの呪いを前に逃げるだけでは悔しいんです。利用できるなら利用して主の役に立ちたい。救っていただいた恩を返したいのです。主に武力が必要でないのは百も承知です。ですが、私は主の槍としてシャルティア殿とは別の方面で主のお役に立ちたいんです」
真面目だなぁ。
でも、無理をしてる訳でもなく本心なのだろう。
過去のことも、自分の力が至らなかったという気持ちもあるのだろう。
悪魔の加護……呪いの力は強力なので仕方ないことではあるけど、二度と過ちを侵さないためにも力をコントロールしてとことん守るのに利用する。
少しばかり危ないかもしれないけど、嫌いじゃない考え方だ。
「分かった。もし気が変わったらいつでも言ってよ。その時は呪いを解くから」
「言葉は曲げません。私は主の騎士なのですから」
「うん、よろしくねルツ」
主のために、大変なことに挑むその危害は本当に清々しい程に騎士らしいといえばらしいか。
何にしてもその場合に備えて魔道具の方にも色々と仕掛けをしてあるし、ルツが強くなりたいというのなら主として応援しないとね。
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