第438話 騎士をお誘い
しばらくすると男は少しはマシな顔になっていた。
メンタルの強さが伺える。
「すまない。見苦しい姿をお見せした」
「お気になさらず」
「料理も美味しかった。見たことがないものだったが……何か聞いても大丈夫だろうか?」
「お粥だよ。お米は知ってる?」
「……東の食べ物だろうか?」
「その通り」
最近は俺が買い付ける量も増えてるし、育てる方も試してるのでスレインド王国付近では知ってる人は知ってるけど、こちらの方でも少しは出回ってきてるのだろうか。
「そんな物を持ち歩いてるなんて君は一体……」
だからこそ、男は俺の返事に驚いたような表情を浮かべる。
米だけではなく、他の要素も合わせての疑問だろう。
こんな場所に単独で来ており、見た目的にまだまだ子供にしか思えない変な子供にその疑問は当然といえば当然か。
「俺の名前はシリウスだよ。そういえば名前聞いてなかったね」
「これは失礼した。俺――いや、私はルツという。ロダリグア王国の元近衛騎士だ」
近衛?ということは王族に仕えていたのだろうか?
ということは、殺されたのは王位継承権を持ってる王子の可能性が高そうだけど……まあ、ロダリグア王国の内情がぐちゃぐちゃしてるのは今更といえば今更か。
とはいえ、一応警戒はしておこう。
「……時に、シリウス殿。もし間違っていたら申し訳ないのだが、貴方のフルネームはシリウス・スレインドだったりするだろうか?」
「うん、その通りだよ」
そう言うと、少しばかり目を見開いてから、納得したような表情を浮かべて後、男は非礼を詫びるように頭を下げた。
「王族の方とはしらず無礼を働きました。どうか命だけはお許し頂きたい」
王族に接してただけあって、他国の王族についてもそれなりに知ってるようでそんな事を言われてしまう。
ふむ、命だけはか。
「生きる気になったんだ」
「……それが主の最後の命令ですから」
何よりだ。
「国に復讐とかする?」
「いいえ。悔しいですが私だけでは勝ちきれません。主の命令を守る方が何より大切ですから」
本当に実直な騎士様だ。
ウチの騎士様も負けてないと思うけど。
「じゃあ、非礼のお詫びに俺の元に来る気はない?」
「スレインド王国にですか?」
「うん。というか、俺の騎士になって欲しいかな。生憎と一番の騎士は決まってるけど、高待遇は保証するよ」
シャルティアという最高の騎士が居るけど、優秀な人材は大歓迎だ。
そう言うとルツは少し驚いたような表情を浮かべて聞いてきた。
「このような素性の知れぬ騎士を雇ってくださるのですか?」
「嫌かな?」
「……嬉しいお誘いですが、本当によろしいのですか?私は……私の存在がシリウス殿下に災いをもたらすかもしれません。それに……私は主を守れない約立たずの騎士です」
返答的には悪くない反応。
新しい主に仕えるのに抵抗はないが、懸念事項ありというところか。
やはり魅了の力の呪いを恐れているのだろう。
なら、それらの杞憂を取り払ってしまえば問題ないかな。
「じゃあ、確かめてみようか」
「確かめる?」
「うん、その呪いが俺に届くのかどうかってこと」
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