第433話 トリスの結婚式

ゴーンゴーンと鐘の音が響く。


場所は俺の領地にある教会。


そこで本日、前々からの約束であるトリスの結婚式が行われていた。


「汝、トリスは妻ミリーのことを生涯愛し、共に生きることを誓いますか」

「誓います」


タキシード姿のトリスが神父の言葉に答える。


凛々しいものだ。


「妻、ミリー。汝は夫トリスのことを生涯愛し、共に生きることを誓いますか」

「誓います!」


……うん、大変情熱的なのはよく伝わってくる。


誓いの言葉の重みが違いそうだ。


「では、誓いのキスを」


その言葉に思わず自分から乗り出しそうになるのを何とか抑えてトリスからのキスを待つミリー。


肉食系なのは知ってたけど、反射でその行動が出てくるのは凄まじいな。


トリスは実にスマートに口付けを交わす。


イケメンだねぇ。俺も婚約者達との結婚式ではこれくらいカッコよくありたいものだ。


「あらあら、あなた。泣きすぎよ」

「すまない……。だが……うむ……うむ……本当に良かった……」

「ふふ、よしよし」


この結婚式に一番喜んでいるのが花嫁のミリーであるなら、その次くらいに喜んでいそうなのが何だかんだでトリスとクーデリンの父親の獣人族族長のドーベルだろう。


男泣きしてる所を奥さんにフォローされてる。


まあ、一度は死んだはずの息子が生き返ってこうして挙式を上げてるのを見れば涙腺も緩むか。


ミリーの両親も二人の結婚を祝福してるけど、どちらかといえば娘が我慢の限界を迎えてトリスをお持ち帰りしないか心配してる様子もある。


親から見ても肉食系なのだろうなぁ。


「ミリーさんとっても綺麗です」


ミリーの花嫁姿に隣のクーデリンは心から嬉しそうに笑みを浮かべる。


「あれってシリウスが用意したの?」

「いんや。ほとんど向こうが用意したものだよ」


ドレスは代々のものがあったようで、それをドーベルの奥さんがミリー用に手直ししたらしい。


「花嫁姿かぁ……いいねぇ」

「はい、憧れます」


そう言ってからフロストとクーデリンの二人からちらりと視線が向けられる。


……このタイミングで向けられた視線の意味とは。


「二人のウェディングドレス姿もきっと素敵だろうね。その相手はかなりの幸せ者ってことは間違いないかな」


無難な答えのつりもだけど、及第点ではあるのか嬉しそうに左右の幅が少し狭まったような気がする。


というか、フロストの方は嬉しそうに抱きついてきてるし。


それを見て、クーデリンも控えめに寄り添ってくる。


それがどういう事なのか……分からないほど鈍くもないけど、もう少し互いを知ってからその答えは出すべきだろうし、今は深くは考えない。


用事があって今日のこの式には俺とトリスの妹のクーデリン、そして俺の付き添いにフロストの三人しか来れてないんだけど、示し合わせたように他の婚約者達が来れてないのも何かしら裏で話し合いでもあったのだろうけど、悪い方向に向かってる気はしないし気にしない方向で行く予定。


とりあえずは今は友の門出を祝うことを優先ということで。


めでたい日だしね。

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