第431話 久しぶりに目が合った

ちょくちょく所用で欠席してしまうが、俺は学園に通う学生。


きちんと学びも忘れることなく学校に通う必要がある。


……まあ、学ぶよりも教える側ではあるんだけど、それはそれ。


「よう、王子様。また暫く見なかったが面倒事にでも巻き込まれてきたのか?」

「少し用事があっただけですよ」


久しぶりの学園だけど、ドレッド先生は相変わらずのようで何より。


「そうか。何にしても王子様が来ると空気が変わって生徒達には良い事だ」

「そんな変わります?」

「王子様の想像の10倍くらいは差があるな」


かなり誇張してそうな数字だけど、活気があるのは良い事だ。


いや、それよりも。


「あの……アロエ先生はそこで何を?」


俺が入室した瞬間、隠れるようにカーテンの裏に飛び込んだように見えたんだけど、間違いじゃないようにアロエ先生らしき影が見える。


「あー、気にするな。普段は大丈夫なんだが、王子様が来たから心の準備ってやつが必要になったんだろ」


何故に?


何かしただろうか?


「ほれ。いい加減出てこい」

「あの、もう少し時間を……」

「それは良いが、このままだと王子様が勘違いするぞ。お前に嫌われてるじゃないかってな」

「……分かりました」


観念したように出てきたアロエ先生。


「ご、御機嫌よう……殿下……」

「こんにちはアロエ先生。あの……その後加護紋の方は大丈夫でしょうか?」

「はい、体調などは特に問題ないです」


問題ないのは加護を通して分かってるけど、一応確認するとアロエ先生はそう答えてくれた。


……視線が合わないなぁ。


「すみません。前も話した通り無意識に繋がりが出来ちゃったみたいで。ご迷惑でしたよね」

「い、いえ!そんな事はないです!」


そう言って慌てるアロエ先生と久しぶりに視線があう。


目と目があってしばらく見つめ合うと、数秒してアロエ先生が顔を赤くして蹲ってしまった。


「重症だなこりゃ」


呆れるドレッド先生だけど、俺としてはアロエ先生には迷惑をかけまくってるので少し心配だ。


加護紋で無意識に繋がりを作ってしまう以前から、無理やり形だけの婚約者になって貰ったので悪いことをしたと思う。


とはいえ、あの場はああするのが一番アロエ先生の為になると思ってやったので後悔はない。


ないけど……アロエ先生にはきちんとお詫びの機会を作りたいものだ。


「アロエ先生。今度時間がある時に良かったらウチに来ませんか?色々とお詫びもしたいので」

「王子様。追撃は止めてやれ。それ以上つつくと爆破しかねないぞ」


そうなの?


首を傾げる俺と、俺の言葉に更に赤くなってアワアワするアロエ先生を見てドレッド先生は実に呆れたようにやれやれとため息をついた。


本当に何故?


まあ、そんな事はさておき、一応アロエ先生を誘うことが出来たし加護紋の方も問題ないようなので本当に良かった。


それに、久しぶりに目を見て話もできたし、悪くない成果だよね。


徐々にお詫びをしていこう。

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