第430話 テオ帰還

クーデリンが領地に来て少しした頃。


思ったよりも遅めの帰還になったテオが領地に戻ってきた。


「すみません。少しトラブルがありましたので」


そう言いつつ、テオは手土産としていくつかの品を取り出した。


「龍王様からお嬢様がお世話になるからと預かってきたものもありますので、お納めください」

「それは有難いけど……大丈夫なの?」

「ええ、トラブルの方は瑣末なことだったので。ただ、流石に少し疲れたので数日はのんびりさせて頂ければと」


何があったのかは分からないけど、テオの様子を見るに肉体的な疲労というよりは精神的なものに見える。


例えるなら……そう、仕えてる主人がはしゃぎすぎてその相手で疲れてる……みたいな?


多分、龍王絡みだろうけど何か良いことでもあったのだろうか。


深くは聞くまい。


「ゆっくりしてよ。奥さんも寂しがってるだろうし」

「ありがとうございます。そういえば、お嬢様の様子はどうでしょうか?ご迷惑をおかけしておりませんか?」

「すっかり馴染んでるよ」


基本的には自由に動いてるようだけど、屋敷の人間にも領民達にもかなり親しまれてるようだし、馴染み方も凄まじいものだ。


後から来たクーデリンともかなり仲良くなってるし、俺の婚約者全員と打ち解けてる様子。


コミュ力高いよね。


「屋敷に住んでるからか、俺の奥さん扱いされてるって楽しそうに報告するくらいには馴染んでるよ」

「それはそれは。お嬢様らしいですね。ですが、ご迷惑をかけてないなら良かったです」

「むしろ助かってるくらいだよ」


領地の仕事も手伝ってくれてるみたいだし、あまり居ない空間魔法の使い手でもあるのでそちら方面でも助かってる。


まあ、本人曰く、転移魔法はそこまで得意ではないらしいけど。


ドラゴンの姿になって飛んだ方が速いらしいし。


ただ、俺の前ではあまりドラゴンの姿になる気はないと宣言されたなぁ。


『シリウスにはこの姿の私を見て欲しいし』


そのままでも移動手段には事欠かないらしいし、本人がそう言うのならそれでいいのだろう。


「……思ってた以上にお嬢様はシリウス様を気に入ったようですね」

「そうなのかな?」

「ええ。それにすっかり心を許されてるご様子。これは龍王様の浮かれように真実味が増してしまいますね」


そう言いながらもテオの様子は割と穏やかだった。


なんというか、世話してた子供が成長して嫁いだ時のような顔をしてたけど、その様子だけ見れば見た目の若さなんて気にならないくらい、じいやという呼び名が似合う気がした。


俺に子供が出来たらガチでじいやになってもらうべきか?


その頃にはテオの方も子供が居るだろうし難しいかな。


何にしてもお疲れ様。

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