第324話 ソニック・ヘル・ベアー
「シリウス、待ってたよ」
シスタシア王国の王都から、スレインド王国の王都に転移すると、そこでは同じように魔獣を食い止めつつ、避難指示を出すレグルス兄様とラウル兄様の姿が。
「すみません、遅れました。状況は?」
「虎太郎殿とシエル殿が頑張ってくれてるよ。スフィアさんのフォローも助かってる」
「了解です。すぐに片付けますので事後処理はお願いします」
「うん、任せたよ」
王都の人達は兄様達に任せればいい。
心から信じられる家族に任せて、俺は俺にできることを。
そう思って、魔獣の元に向かう。
「スフィア」
「シリウス、あれヤバいね」
住民への被害を抑えつつ、虎太郎とシエルのフォローをしてくれているスフィアは、肩で息をしていた。
少しの間とはいえ、持たせてくれた証だろう。
「ありがとう、後は任せて」
「……うん、ちゃんと褒めてよ」
「勿論」
スフィアの頭を撫でてから、俺は魔獣の相手をする虎太郎とスフィアに下がるように合図を送る。
二人はすぐに察して下がるけど、それよりも速く魔獣の姿が掻き消えるとその爪がシエルへと吸い込まれるように――
ギン!
硬質な音を立てながらその間に立った俺は爪を受け止めつつその魔獣の姿を見て呟く。
「なるほど。ソニック・ヘル・ベアだったか。どうりで三人が手こずる訳だ」
しかもこちらもただのソニック・ヘル・ベアではなさそうだ。
ソニック・ヘル・ベアはスピード自慢の魔獣で、最高速度は音速を越えると言われているけど、爪の硬度が普通のソニック・ヘル・ベアと桁違いに固い。
それだけでなく、体毛の全てがミスリルよりも硬く、その上でスピードまで通常個体よりも速いときてる。
やっぱり、シスタシアと同様におかしな個体のようだ。
こんなのがほぼ同時に、しかも唐突に王都に現れるなんて偶然はない。
神意を感じるけど、今は置いておこう。
「シリウス殿……」
「ありがとう、シエル。後は任せて」
「はい……ご武運を」
完全に下がったのを確認してから、牙を向けてくるソニック・ヘル・ベアの下に回り込むと、俺は思いっきり身体強化魔法で体を強化してから、上に蹴り上げる。
「浅いか」
今の体では、身体強化の許容範囲が決まっているので数十メートルしか飛ばせなかった。
大人の姿に変身すれば肉体戦も有利になるけど、人目もある。
手持ちのカードを上手く使って処理しよう。
念の為に、軽く魔法で追撃を行うけど、毛皮の硬さでほとんど殺されてしまう。
とはいえ、勝てない相手じゃない。
そう考えていると、ソニック・ヘル・ベアの姿が掻き消えた。
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