第323話 ソーサリー・デス・スパイダー
「一歩たりとも通すな!」
シスタシアに転移すると、王都では騎士団が果敢にも魔獣を食い止めていた。
それと同時に避難誘導もしてるようだ。
俺が事前に渡しておいた足止めの魔道具も使ってるけど、多少の嫌がらせにしかなってないようだし、今度はもう少し効果の高いのを作らないと。
「皆の者!絶望するのはまだ早い!必ず我らの国を守り抜こうぞ!」
よく見れば、先頭で指揮をしているのはヘルメス義兄様だった。
魔獣の放つ桁違いの圧にも負けずに、竦む騎士たちに発破をかける。
そんなヘルメス義兄様の指揮により、なんとか騎士達は平静を取り戻すけど、その様子を見て魔獣はヘルメス義兄様に狙いをつけたようだ。
魔獣から複数の魔法が同時に飛んでくる。
それを何とか防ごうと防御魔法を使う魔法使い達だけど……それじゃあ意味が無い。
防御魔法をすり抜けて、複数の魔法はヘルメス義兄様の元に着弾……する前に、俺がガードして全て受けきる。
「待ってたよ」
ヘルメス義兄様の第一声はそれだった。
「すみません、遅れました」
「いや、速くて驚いたくらいだよ。それよりも、スレインド王国の方は大丈夫なの?」
「この後向かいます」
「分かった。僕らは下がった方がいいね」
「頼みます」
ヘルメス義兄様が兵たちを纏めるのを横目に、俺はその魔獣を見る。
名前はソーサリー・デス・スパイダー。
見た事のある蜘蛛の魔獣だけど、やっぱりどう見て普通じゃない。
防御魔法をすり抜ける程度なら普通のソーサリー・デス・スパイダーにも出来るけど、魔法の妨害能力は無かったはず。
今現在、魔力の流れがあの魔獣によって乱されて、魔法が妨害されているのだ。
しかも、どういう訳か俺への魔力妨害が他の魔法使いの比じゃない。
これは……神様の持ってる権能に近い感じか。
厄介だけど、魔法が使えない訳じゃないし、魔法がダメなら物理で叩く。
俺は空間魔法の亜空間から、一振りの剣を取り出す。
「悪いが、時間が無い。一気に終わらせる」
剣の名前はエクスカリバー。
聖剣の中でも上位に位置するもので、この魔獣を殺しきるには最も相応しい剣だ。
魔獣もそれに気づいたのだろう。
約1000ほど。
無詠唱、ノータイムで繰り出される高威力の魔法の数々。
避ければ周りに被害が出る。
だから、俺はそれらを全て切り伏せ、この体に多少の負荷がかかるくらいの動きをみせてから、ソーサリー・デス・スパイダーの背後に回りこむと、上空へと打ち上げてから、剣を構える。
「空なら……被害もでないよね」
力を剣に集中させて、俺は空へと一閃。
聖剣による圧倒的な光。
眩い光がシスタシアの王都上空を包み込み……次に人々が目を開けた時には、魔獣は跡形もなく消滅した。
人々が、その光景に唖然としてから、歓喜する中、俺はヘルメス義兄様にアイコンタクトを送ると、スレインド王国へと転移する。
ヘルメス義兄様は分かっているとばかりに頷いたので、問題ないだろう。
それよりも、急がないと。
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