第325話 クマ退治
空中まで自在に動けるわけか。
そう思っていると、最高速度で俺の横から突っ込んできたソニック・ヘル・ベア。
普通の個体には空を移動する力はないし、僅かに感じる神の力からやはり面倒な個体のようだ。
そう思いながら同じような動きで先程と同じように下に回り込むと今度は身体強化の許容範囲を越えて打ち上げてみる。
体が多少悲鳴をあげるけど、少し痛いだけ。
問題なし。
しかし、クマのやつ、学習したのか思ったよりも上空にはいかなかった。
「仕方ない、手早く済ませないと」
目的が何であれ、俺をここに呼ぶからには何かしら意図があるはず。
なら、早めに片付けて戻らないとヌロスレアの方で何か起こる可能性もある。
「『起動』」
発動のトリガーであるその言葉で、俺の手に一つの魔銃が現れる。
ライフルのようなそれを持って、上空へと上がると追ってくるように音速で迫ってくるソニック・ヘル・ベア。
空なら被害は出ない。
避けるだけなら音速程度雑作ない。
回避をしながら、空中を足場に魔力の糸を設置していく。
見えない魔力の糸は簡単な足止めと下準備。
流石にソニック・ヘル・ベアを倒すには足りないけど、時間稼ぎには十分だ。
速度のコントロールが上手いわけではないソニック・ヘル・ベアは徐々に糸で動きが乱れる。
煩わしそうに吠えるそれを横目に、俺は着々と準備を進める。
「『魔弾装填』、『チャージ開始』、『座標固定』、『各数値オールクリア』」
誘い込むポイントは決まっている。
外すことはない。
魔銃を構えて、目的の地点でスタンバイ。
魔力の糸で動きが鈍くなったクマをエアハンマーで目的地点へと吹っ飛ばして、魔力壁で受け止める。
「墜ちろ」
その瞬間に俺は引き金を引いた。
真っ直ぐに狙い通りに閃光を放ちながら弾丸はソニック・ヘル・ベアの頭蓋を突き抜けて――光が弾ける。
花火のような淡い光。
ミスリルよりも硬い毛皮を貫くだけの魔力を込めたことで、体内に到達した魔弾が弾けた結果、そのような光景になったのだが、下から見ていた人達には少し幻想的に見えていたのかもしれない。
その証拠に、弾けてバラバラになったソニック・ヘル・ベアの一部を魔力壁で受け止めて降りると、謎の歓声が起こった。
被害が建物だけだったようなのは幸いだったけど、やはり三人に足止めを頼んで正解だったと心底思う。
そうして、ソニック・ヘル・ベアは無事に討伐したのだけど……予想通りこれが俺をこちらに足止めするためだけに送られてきたことを俺が知るのは思っていたよりもかなり早かったりする。
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