第317話 ちょっとご機嫌
孤児院に戻ると、相変わらず虎太郎が子供たちと楽しそうに遊んでいる。
強面だけど子供受けの良い性格してるからなぁ。
そんな事を思いつつ、虎太郎をスルーして子供たちからの挨拶を受けて、厨房へと向かう。
「あ、シリウス様。お帰りなさいませ」
夕食の準備をしているアリシアがキッチンにはいた。
それにしても、相変わらず家庭的な姿が似合うなぁ。
「ただいま、アリシア。シエルは?」
「お呼びでしょうか?」
そっと控えるように現れるダークエルフのシエル。
少しシャルティアと動きが似てきてる気がする。
「ただいま、シエル。こっちは大丈夫だった?」
「はい、問題はありませんでした。シリウス殿の結界は完璧です」
「そっか、ありがとう」
何だかんだで、こっちに来てからはアリシアとシエルには色々とお世話になってるし今度何か返せるといいけど。
考えておこうかな。
「シリウス様、何か良いことがありましたか?」
ふと、俺の顔を見てからそんな事を聞いてくるアリシア。
「強いて言うなら、アリシアの作る美味しそうな夕飯の匂いかな」
「それ以外でですよ。何だか楽しいことがあったような表情ですよ」
そうだろうか?
「確かに……そう見えますね」
「ですよね」
二人にはそう見えてるらしい。
まあ、確かに嬉しい出会いがあったといえばあったかな?
「友達が増えたからかもね」
「友達……その、それはあのケイオス殿の姉妹の方たちということですか?」
「ケイオスの妹の一人だね」
そう言うと、シエルが何とも形容しがたい表情になる。
「ほれみろ。坊主がまた女を堕としてくるって俺の予想が当たってただろ?」
「おかしな予想を立てないでよ」
いつの間にやら、子供たちの包囲から抜けてきた虎太郎が失礼な予想が的中したとばかりに後ろで笑みを浮かべていた。
「しかし、一人とは少ないな。本当はもう二、三人は口説いてきたんだろ?」
「虎太郎には、そんなに俺が好色に見えてるのかな?」
「周りを見れば答えは出てると思うぞ」
その言葉に近くにいるアリシアとシエルの二人を見ると、二人は照れたように少し赤くなって視線を逸らした。
……いやいや、その反応はどうなのだろう?可愛いけど。
その後、夕飯の席で、アンネのことを軽く話したけど、シエルの表情がまるで『ライバルがまた増えたようだ』と言いたげだったのだが気の所為だよね?
アリシアは俺の話を笑顔で聞いてたし、問題ないはず。
だから、虎太郎。
『アリシアの嬢ちゃんはすっかりこっちでの坊主の正妻だな』という顔を止めなさい。
現地妻とかではないから。
好ましいし、好かれてるのなら悪い気はしないけど、婚約者が現時点で八人もいる俺なんかの嫁になりたい人なんてそんなに多くないだろうしね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます