第316話 念の為のお守り
ケイオスとアンネと話していると、時間も程よくなり、俺は他のケイオスの姉妹達のお菓子を用意してから、孤児院に帰ることにする。
見送りにはケイオスとアンネが来てくれた。
別に見送りはいいと言ったのだけど、俺が帰ることで、少し寂しそうなアンネにケイオスが気を使ったことでこの二人の見送りになったのだろう。
ケイオスも中々シスコンだと思う。
「今日はありがとうね、シリウス」
「お菓子作っただけだから」
「そういう事にしておくよ」
分かってると言わんばかりの笑みだ。
俺とアンネが何を話したのか、正確には知らないだろうに、ある程度察してそうな所が、有能な我が兄君達……レグルス兄様やヘルメス義兄様の系譜に近しいものを感じる。
イケメンと有能はデフォルトのようだ。
「シリウス様、あの……」
何を言えばいいのか、言葉を選んでいる様子のアンネ。
そんなアンネの様子を見て、俺は空間魔法から一つのペンダントを取り出すとアンネに渡した。
「これは……?」
「お守りだよ。最近は物騒だからね。本当にどうしようもない時のために持っておくといいよ」
言葉の意味するところを察すると、アンネはそっとペンダントを握りしめた。
「ありがとうございます。……シリウス様には、助けられてばかりですね」
「そんな事ないよ。俺だってアンネに助けらたんだから」
「助けられた?」
「うん、理解者が増えたって意味なら分かるかな?」
具体的には少し違うけど、何度も同じ時間をやり直すというのは中々に大変で過酷だ。
過去何度も経験しているけど、この感覚を他人と共有するような機会はなかなかなかった。
例えるなら、同じ職種の人間とその仕事の苦労を分かちあって、あるある話をしたような気分。
少しすっきりしたような気持ちには確かになったし、アンネと会えて良かったと思う。
アンネと微笑み会うと、それを見てケイオスがニヤリと笑みを浮かべて言った。
「本当に凄く仲良くなったね、二人は。なんならアンネの嫁ぎ先の候補はシリウスでも良いかもね」
「お、お兄様……」
「嫌かい?」
「……意地悪な質問止めてください」
「ははは、そうだね。まあ、親友のシリウスになら可愛い妹を任せられるってことで」
そこまで信じてくれるのは嬉しいが、何をそんなに俺の事を気に入ってくれたのやら。
「俺は悪い男だから妹を安易に差し出さない方がいいぞ?」
「でも、アンネのこと受け取ったら幸せにしてくれるでしょ?」
「アンネが望めばね」
「なら、大丈夫」
何が大丈夫なのかは知らないけど、とりあえず恥ずかしそうなアンネは少し可愛かった。
そうして、ケイオスの屋敷への訪問は終わったのだが、アンネからの情報とアンネとの出会いはかなりの収穫だ。
万が一の保険もかけられたし、あとは時を待とう。
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