第309話 最適解
「んー、アズマ辺りに行かせればいいんじゃないか?」
話を聞いたドレッド先生の最初の言葉がそれであった。
「先輩、行きたいのは山々ですが、流石にここにいるメンバーが抜けるのはキツすぎますよ」
「そうですね、出来れば私が行きたいところなのですが……」
「アロエはダメよ。受け持ちが多いし、行くにしても今の子達を置いてくのも代わりの教師を作るにも時間が居るのよね」
残念そうなアロエ先生と、それに頷くツンデレ先生。
まあ、そうだよね。
「あんたも少しは考えてものを言いなさいよ」
「考えた上で言ったんだがな」
「どうだか」
「このこの」
「ちょっ……脇つつくな!変態!」
「いいだろ、減るもんじゃないし」
相変わらずのやり取りをするドレッド先生とツンデレ先生。
入籍はまだなのだろうか?
後でアロエ先生にでも聞いてみるか。
「んー、だとするとこっちである程度教えてから送り出すのが手っ取り早いか」
「時間ありそうですか?」
「俺とアロエなら何とかなるだろ。とはいえ、流石に二人じゃキツいし、シスタシア側でも受け入れてくれるならそっちに回すべきだろうな」
それが妥当な所か。
「あとはそうだな……あいつなんてどうだ?」
「あいつって誰よ?」
「アイツだよほら……こないだ入ってきたお前とどっこいどっこいの口の悪さの女」
その一言でまたしてもじゃれ合う二人。
仲良いなぁ、と思っているとアロエ先生が思い当たったように名前を出す。
「ええっと、ビワさんですか?」
「そうそう、アイツは口は悪かったが覚えもいいし、教材があれば今すぐ送り出しても問題ないだろ」
ビワ……ああ、この前入ってきた侯爵家のご令嬢か。
この学校の卒業生で、親の決めた相手との結婚が嫌で教員として入ってきたとか前に言ってた人だな。
「いや、ビワさんはどうかと……」
割りと賛成の空気が流れそうな中で、難色を示したのは意外なことにアズマ先生であった。
「なんだよ、アズマ。アイツならやると思うぞ」
「ですけど、まだ入ってきたばかりですし、教えることもありますし……」
「そんなの向こうでもやれるだろ。王子様も協力してくれるだろうしな」
まあ、それくらいなら別にいいけど。
元からそのつもりだったし。
とはいえ、俺はアズマ先生の様子からある可能性を想像して思わずアロエ先生にひっそりと聞いてみた。
「アロエ先生、ビワ先生の教育担当はもしかして……」
「はい、アズマさんです」
「なるほどなぁ……」
そこまで鈍くないので、ラブの気配が何となく伝わってしまった。
「アズマ先生の片思いなんですか?」
「いえ、両思いのようですよ」
アロエ先生はそう断言する。
そうなると流石に引き裂けないわな。
遠距離恋愛も良いけど、まだまだ知り合ったばかりだし話を持ち出すにしてももう少し先の方がいいかもしれない。
それに、現在進行形で恋してる俺からしたらやっぱり離れ離れは辛いものもあるよ。
そんな訳で、代案として別の人を紹介して貰うことになったけど、アズマ先生とビワ先生のラブコメは気になるので、今度時間のある時にアロエ先生とお茶でもしながら聞いてみようかな。
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