第310話 ケイオスの屋敷

学園の件はある程度道筋が見えてきた。


とはいえ、それはあくまでもヌロスレアをきちんとケイオスが手中に収めてこその話だ。


そうなると、やるべき事は他にもまだまだある。


日々の配給のお手伝い、孤児院の子供たちとの触れ合いとお世話、2日に1度は家に帰って婚約者達に顔を見せて癒される。


そして週一でライブ……うん、まだ育つには早すぎるので俺が一人で回しております。


そうした中で、その日は俺はケイオスの屋敷に来ていた。


絶妙に城や街から遠く、そこそこの広さのある屋敷は王族が住むには手狭にも思えるけど、暮らすのに不自由はなさそうだった。


「ようこそ我が家へ」

「「「ようこそ、いらっしゃいました」」」


ケイオスと共に出迎えてくれたのは、ケイオスの姉と妹達だった。


ラウル兄様のファンのお姉さんは知っていたけど、他に姉が五人、妹が八人いたらしい。


見事な女家族だなぁ。


腹違いの子も多そうだけど、比較的仲は良さそうだ。


「あのあの、レグルス様の弟様というのは本当でしょうか!?」

「私はヘルメス様のお話を是非とも」


さて、そんな個性的なメンバーの中で、一番積極的なのはレグルス兄様のファンの妹さんと、ヘルメス義兄様ファンの妹さんであった。


熱量がとにかく凄くて、あれこれと聞いてくる。


ここまで熱狂的なファンが居るとは流石イケメン兄様。


しかし、ラウル兄様よりも納得出来てしまうのは何故なのだろうか?


そんな事を思いながらもケイオスの姉と妹さん達と話すけど、それにしてもケイオスに負けず劣らず美形ぞろいなのは凄いな。


とはいえ、まだまだ子供の俺なんかよりも、レグルス兄様やヘルメス義兄様に夢を抱いてるような子達が多いようで微笑ましいものだ。


「ごめんね、シリウス。騒がしいでしょ」


少し落ち着いて席に着くと、ケイオスが申し訳なそそうな顔でそんな事を言う。


「賑やかで楽しそうだけどね」

「それは同感」


そう思わず微笑みあってから、ふとケイオスは思い出したように言った。


「そうそう、本当はもう一人妹が居るんだけど……来てないみたいだね」

「そうなのか」


まだ居たことに驚きを隠せないけど、ケイオス的には全員と挨拶させられなくて申し訳ないという感じかな?


「まあ、そのうち会う機会もあるだろうし、会えたら話でもしてみるよ」

「うん、そうだね。シリウスとならきっと仲良くなれると思うんだよね」


深い意味はないはずなのに、俺限定というような言い方に聞こえてしまう。


自意識過剰だろうか?


少し引っかかるけど、まあ、気のせいだろう。


「ところで、厨房借りてもいい?」

「何か作ってくれるのかい?」

「折角だしね」

「じゃあ、頼むよ。僕はここで姉妹達を足止めしとくから」

「助かるよ」


見物人がいても代わらないけど、一人の方が早いのも確かだ。


俺は音を立てずに部屋を出ると厨房と思われる場所へと向かうのであった。

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