第296話 第3王子、ケイオス・ヌロスレア

ケイオスは平民上がりのメイドとヌロスレア国王の間に生まれたそうだ。


本来なら、認知されないはずの子供であったケイオスだけど、ヌロスレア国王がケイオス母を殊更気に入っており、その子供のケイオスにも寵愛を与えたそうだ。


色々な反対を押し切って、第3王子という身分につけたそうだけど、その頃のヌロスレア国王はまだ本物だったらしい。


「子供たちはなるべく認知してたみたいだね。父には男の子の子供は少なくて、僕の場合はスペアのスペアみたいな位置付けの意味もあったんじゃないかな?」


第1王子、第2王子に何かあった時の予備だったのではと、ケイオスは考えてるようだ。


とはいえ、その後で軽く聞いたヌロスレア国王の様子なんかを聞くと、割と気にされていたようだし、期待もされていたんじゃないかと俺は思った。


現に、王宮には住まわせ貰ってたらしいし、兄達ほどではないけど色々と教育も受けられたそうだ。


たまに仕事を見学させたこともあったらしく、その辺は兄達よりも優遇されていたのかもしれないらしい。


「父上は知ってたんだろうね。ヌロスレアのトップになるという意味について」


先々代か、その前からヌロスレア国王になってある一定の年月が経つと、とある儀式が行われるらしい。


「儀式といっても、先代から王の部屋を譲り受けるだけなんだけどね」


仰々しい呼び名のある儀式の内容はそれだけらしいが、どうやらその部屋が例の偽物の巣食う場所らしい。


「8年前のその日、母は父と一緒にその部屋に入ってからそのまま出てきてないんだ」


翌日、戻らぬ母を不審に思ったケイオスが見張りを掻い潜り部屋に向かうと、そこで偽物と話をしたそうだ。


「父上でないのは一目で分かったんだ。確かに似てるけど全身から漂う不気味な雰囲気も……そして、少しだけど漂ってる血の匂いとその偽物から感じる不快感が凄くてね」


そんな異常な存在を前にして、何とか平静を保ったらしいが、その偽物はそれら全てを見抜いたように言ったそうだ。


「『ご馳走様、まあまあだった』……らしいよ」


その日から、父のフリをした化け物はヌロスレア国王になってるらしい。


「『ヌロスレアの王族は歳をとると残忍に、かつ好色になる』父上が昔そう言ってたけど、そんな未来も分かってたんだろうねぇ」


偽物は勘づいたケイオスに言ったらしい。


『もしも憎ければ、殺せるような存在になるといい。まあ、それで仇を討てた者は一人も居ないがな』――と。


「楽しんでるんだろうね。そうして向かってくる相手が来て欲しいみたいだった」


ケイオス自身、その偽物は嘘をついてないと何となく分かったそうだ。


ヌロスレアの汚い大人たちや、人の本音と建前の駆け引きなんかに幼少から触れてたからこそ、その汚い気持ちが真実だと分かったらしく、その辺は「父上に感謝だね」と苦笑していた。


「その後は大人しくしてる僕や真実を知らない、役に立たなそうな姉や妹達を適当な隅の屋敷に追いやったんだけど、そこで興味がなくなったらしくてね、放置されてるんだよねぇ」



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