第297話 王子の覚悟
ゆっくりと俺が淹れたお茶を飲んでから、ケイオスは続けた。
「正直、父上はともかく、母上のことは大好きだったからあの化け物を憎む気持ちはある。両親を殺された――いや、下手したら食べられたのだとしたら更に憎いよね」
とはいえ、ケイオスの持つ力で勝てるとは言えず、何よりも周りが今のヌロスレアを是としているのだから、個人ではどうしようもない。
「人並みに復讐計画も考えてみたけどね、残ってる姉や妹達の事を考えると無茶や無謀は出来ない。苦しんでる国民たちの事も知ってしまったし、それだって放っておけなくて正直荷が重すぎて困ってたんだよね」
そんな風に過ごして機会を伺っている中、成人してしばらく経った丁度今、このタイミングで俺がノコノコとやってきたらしい。
「ガタイの良い乙女な店主のことは知ってるよね?」
「まあ、店に行ったしね」
おそらくは、アリシアと行ったあのマッチョで乙女なやり手の店主の事だろうと似たような認識ですぐに分かるのがある意味凄い。
「その店主から僕に君の話が流れてきてね、色々聞けたけど、たった数日の動きじゃなくてびっくりしたよね。でも、そんな君になら賭けても良い気がしたからこうして訪ねてきたんだ」
その顔にあるはまさしく覚悟を決めたような男の表情であった。
「頼む、シリウス。この国を救うために……僕に力を貸してほしい」
真摯にそう頭を下げてお願いするケイオスに俺は考えるまでもなく頷く。
「元からそのつもりだよ。というか、ケイオスが訪ねて来なかったら明日にはケイオスに俺が頼みに行ってたからね」
ヌロスレア王国を安定させるには、旗頭となる存在が必要不可欠。
その中で最も可能性のあるは情報からしてケイオスしか居ないと俺や、レグルス兄様、ヘルメス義兄様は考えていた。
話していて、ケイオスは信用できると思うし、俺としても任せるならケイオスしか居ないだろうと今改めて確信を持ったところだ。
「ありがとう」
そう再び頭を下げると、今度は一転してどこか面白そうな笑みを浮かべてケイオスは言った。
「それにしても、こうなるのも見越してたようだし、君も君の家族も凄いね」
「まあ、うちの兄様達は凄すぎるから、その程度はね」
「君だって見抜いてたんだろ?」
「いんや、成り行きが大きいかな」
どちらかと言えば先を読んでたのはレグルス兄様やヘルメス義兄様なので、俺は使わる側と言えるだろう。
「シリウスらしいかもしれないね。何にしても、上手いこと使われてあげるから、この借りは僕が王位に付けたらちゃんと返すよ。もちろん出来る範囲でね」
「あんまり期待しないでおくよ。そもそも見返りが欲しくてやることじゃないし」
アリシアや子供たちのためなので、必要ないと言えばケイオスは更に笑みを深めて「君らしいね」と微笑んだ。
そうして、その日俺はケイオスと協力することが決まったのだが、ヌロスレアのためにはケイオスは必要だろうし問題ないかな。
とりあえず、早く終わらせて平和になりたいものだ。
うんうん、平和が一番だよね。
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